「ストロベリークリーム〜Nuts」-3
私はついため息をつく
「スカート一着に…」
「お姉ちゃんも恋すれば分かるよぉ、可愛いって言われたいキモチ」
「会うたびに今日も素敵だねって言われて嬉しい気持ちねえ」
杏子までうっとりした顔つきになる
「お姉ちゃんが愁と付き合っちゃったりしたら面白いんだけどねー」
「ないない、あいつは奈々には無理よ」
少しムッとした
「誰よ、しゅうって」
「インテリっぽい眼鏡かけた、お綺麗な顔の青年よ」
「確かにあれは無理だなぁ〜あんな美しい人独り占めにするなんて超難関だよ」
「そんな外見のことじゃなくて…あの人なんかあるわよ、絶対。
真面目ぇな奈々の手に負えないでしょうね」
何よ、その言い方。
私は少し膨れるが、言い返さずに部屋を出た
二人とも、私が恋したことないって決め付けちゃって
…人ってそんなに分かりやすいものじゃないわ
鈍い痛みを思い出して嫌な気分になるが、意識する前に記憶を払いのける
あーあ…もう課題全部終っちゃった…どうしよう
---あいつは奈々には無理よ---
杏子の言葉を思い出す
私が真面目なだけで面白味のない人間だっていうのは本当だから、特に怒りは感じない
でも-----興味がわいた
…愁さんって…どんな人なんだろう。会ってみたい
唯と杏子がしつこく話すから、私自身は行ったこともないのに、喫茶店「A.S.」についてやけに詳しくなってしまった
三人の男の子が働いていること
その三人が「あるサービス」をしてくれること
竜が赤毛で目つきが悪くて、紺は小さくて可愛くて、
…愁がとても綺麗だってことも
そっと時計を見る
これからすることもないし…ちょっと行ってみようかな
私は上着を着て、靴を履く
---無意識に覚えてしまった合言葉を、頭の中で復唱しながら
***
入り組んだ通りを抜けると、洋風の小さな建物が見えた
「良いにおい…」
…カラン
店の扉を開けるが、誰もいない
あれ?ここだよね?
少し不安になって店から出ようとすると、すぐ近くから声がした