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淫蕩淫魔ト呪持
【ファンタジー 官能小説】

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淫蕩淫魔ト呪持-7

第三章 目覚める、悪魔

「獣魔三体、殺ってきたぜ」
酒場のカウンターに、ズッカは獣魔の角を置いて言った。
店主は驚いた様子でひとつずつ角を取り上げてはじっと眺めている。
「随分と早いな! 依頼してから一日も経ってないじゃないか」
「本当なら午前中で済ませるつもりだったんだがな……」
言って横目でキルシェを見やる。
カウンター席に腰掛けたキルシェは、むっとして頬を膨らませた。
「これでようやくあそこに生える茸を採れるようになるよ。さすが"棒使いのズッカ"、"呪持ち"だな!」
感嘆する店主に、キルシェがくすくすと笑いながら、そっと耳打ちをする。
「"夜"の棒もすごいのよぉ」
「へええ、"夜の棒使い"ってか」
そんな下らない冗談を言い合いながら笑う二人を、ズッカが鋭い瞳で睨みつける。
「冗談、冗談だってば、ズッカ」
キルシェは笑いながらズッカの肩をぽんと叩いた。
「……親父、早く報酬を寄越しな」
「はいはい、ただいま」
店主は慌ててカウンターの下から、報酬の入っているであろう袋をカウンターに置く。
ちゃり、と軽い金貨の音がした。
「ち……こんなもんか」
袋の中身を確認し、ズッカは舌打ちした。
「これでも早く奴らを片付けてくれた分、増してあるんだぞ? ま、仕方ないさ。最近は中級辺りの悪魔も大人しいからな……っと!」
店主は言いかけ、不意に酒場の中の掲示板に走って行った。
彼は掲示板の貼紙の一枚を剥がすと、それを持って戻ってきた。
「あんたなら、こいつが殺れるかもしれないぞ」
「?」
ズッカは、店主に手渡された貼紙に目を落とした。
その横からキルシェも覗く。
「ほ、報酬金貨千だと!?」
「わお、太っ腹」
二人が思わず声を上げた。
通常悪魔狩りの報酬としては、下級悪魔なら金貨一枚から十枚、中級悪魔ならそれの倍、上級悪魔なら金貨五十枚程度が相場である。
金貨千枚とは破格の報酬だ。
しかしこれが甘い餌であることは、もちろんズッカには分かっている。
「それで、どんな悪魔なんだ? ここには報酬と上級しか書かれていないが……」
彼の言葉に店主は幾分か神妙な面持ちを浮かべた。
「……五十年に一度目覚めるといわれる、最強最悪の悪魔だよ」
「五十年に一度」
「ここらで奴のことを知ってるやつはいないぜ。何せ……」
店主の額から冷汗が流れた。
「何せ、五十年前にことごとく殺されちまってるからな。残っているのは死にぞこないの爺婆と伝説くらいだ」
通りで、北の国と西の国の境にあり交通の便がよい広大なヤミの森に、街――それも寂れた街がひとつしかない筈だ。
ズッカは納得した。
「だが、やってみる価値はある。金貨千枚は魅力なんでな」
「けしかけたのは俺だが、無茶はするなよ。命あってのものだねだ」
ズッカは口の端を吊り上げて言った。
「分かってる」
彼は貼紙を小さく折りたたんで報酬と共に懐に入れると、荷物と得物を手にとった。
それを見やり、キルシェも立ち上がる。
「期待してるぜ、"呪持ち"の"棒使い"」
店主の言葉に小さく頷き、キルシェと共にズッカは酒場を後にした。


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