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淫蕩淫魔ト呪持
【ファンタジー 官能小説】

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淫蕩淫魔ト呪持-6

「さあな」
「けち。教えてくれてもいいじゃない」
頬を膨らませるキルシェだったが、ズッカは完全に無視を決めて歩く。
「………」
「ふぅん。折角、教えてくれたら呪払いのお札をあげようと思ったのに」
キルシェが言いながら懐からちらりと白い紙を出して見せると、少しばかり先を歩いていたズッカが足を止めて振り向く。
そして、その白い紙に手を伸ばした。
「ダーメ」
彼女は舌を出して紙を懐にしまった。
呪払いの札――その名の通り、呪を破棄する札である。
見た目こそ何の変哲もない紙切れだが、呪がかかる瞬間にこの札を翳すと、呪の煙を吸い取ってくれるという代物だ。
非常に高価なものであり、使う者の力によって効果も変わる。
「何でお前がそれを持ってる」
「秘密。けちなズッカには教えてあげないもん」
「……分かった。教えてやるよ」
ズッカは溜息混じりに言った。
キルシェはにっこりと笑うと、再び札を取り出した。
「これね、知り合いの淫魔がくれたものなの。人間は呪払いって呼んでるけど、元々は何の魔法でも吸い取っちゃう、護身用の道具なんだよ」
「俺に寄越せよ」
ズッカの言葉にキルシェは軽く肩を竦めた。
「ズッカだって知ってるでしょ。使う者の力によって呪を吸い取ってくれる確率、変わるんだよ」
「つまり?」
「ズッカよりあたしの方がずっと魔力が高いもんね。もしズッカがヤバそうな呪にかかりそうになったら、あたしがこれを使って助けてあげるってこと」
「………」
確かに筋は通っているのだが――何となく騙されているような気がして、ズッカは憮然とした表情を浮かべて黙り込んだ。
しかしキルシェは彼の顔を覗き込みながら、楽しげに笑って言う。
「それで? ズッカの一番辛かった呪って、何?」
「……女を殺しちまう呪」
食い下がるキルシェに、彼は溜息をついてから渋々とそう答える。
そして彼の答えた、妙に物騒な呪に、キルシェは驚いたような表情で更に問うた。
「殺すって、どうして? どうなったの?」
「………」
今度の問いには答えず、ズッカはやはり少しだけ足を速めた。
そして、キルシェもそれに合わせて小走りの速度を上げた。


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