淫蕩淫魔ト呪持-16
「ただ、奴のかけた呪だ。七日じゃ済まねえだろう。俺は奴を追って呪を解除させる」
「あたしも、行くよ」
考えることなくキルシェは言った。
ズッカはふと微かに笑い、彼女の顎を掴んだ。
「……お前も壊れるかもな」
自嘲するように笑うズッカに、キルシェは顔を近づける。
「何言ってるの!」
鼻と鼻がくっつきそうなくらいの近さで、キルシェは笑った。
「あたしを誰だと思ってるの」
彼女は言ってズッカの唇を指でなぞり、ぺろりと赤い舌で唇を湿らせた。
幼い少女の姿、しかしその艶かしい仕草に、ズッカは少しだけぞくりとする。
「ずっとついて行くんだから」
「逆に俺を殺すなよ」
ズッカはそう言って肩を竦め、苦笑する。
風が吹き、木々が微かにざわめく夜。
月が出ているにもかかわらず、不気味に暗い森の中――ズッカはキルシェの舌に己のそれを絡ませていた。
焚火は風に消え、青い月の光だけが二人の絡む姿を照らし出す。
彼に休まる夜は、まだ当分来そうにない。