こーゆうのもアリなワケで…-1
━━昼下がりの気だるく怠惰な陽射しがキンモクセイの香りをより甘く感じさせる━━
そう千歳(ちとせ)は狭いワンルームのベランダで煙草をくゆらせながら思う。
のどかな日曜日の住宅街。
閑静な住宅の隙間に埋め込まれるように所々建つ学生用マンション。
眼下の道路を小学生が何かを口々に叫びながら幹線道路の方に駆けている。
千歳はゆっくり煙草を吸い込み、目を閉じ煙を豪快に大量に吐き出した。
陽射しは暖かいが風は肌寒い。
まだ姿を見せない冬が忍び寄って来ているのだろう。
その存在は不気味であり、何度も体験したとはいえ沖縄出身の千歳には脅威でしかない。
冬の事を考えていると、薄手のスウェットとボクサーパンツだけでベランダにいると寒く感じてきた。
千歳は舌を鳴らし、煙草をクーラーの室外機の上に置いている灰皿に押し付け、ゆっくりと部屋に入った。
「どーして欲しい?」
千歳はベッドで動く毛布の塊に勝ち誇った顔でたずねる。
すると、毛布の塊がおえつとも媚声とも区別のつかない声をあげた。
「…ふぐっっ……。……くっふぁっっ」
「ユサがオレの知らないトコで遊んでる玩具じゃないの。ちゃんと、楽しんでヨ」
毛布の塊がイヤイヤをするように左右に揺れる。
塊が動き続けていると、それなりの質量を持った物体がモーター音と共にベッドに落ちた。
そして、物体はそのまま低音をたててベッドの上をうごめき続ける。
「遊佐子(ゆさこ)、おま○こから出しちゃたの??ダメじゃないの」
千歳は歌うように言うと、毛布をベッドからはがした。
ベッドの中には四肢を手錠で繋がれ自由を失い、身体の全てを開いた遊佐子(ユサコ)がいた。
大学院博士課程の千歳にとって1年前まで大学教授秘書である遊佐子は羨望の対象でしかなかった。
遊佐子の柔らかな物腰と30歳とは思えないあどけなさと初々しさは院生達の間で逆年齢詐称疑惑がささやかれるほどだった。
しかし、職務に対する的確さと丁寧さは誰もが認め、信頼性においては他の追従を許さぬ程高かった。
誰に対しても公平に優しく、勝手気ままな冗談を言う遊佐子。
時折見せる一人のオンナとして熟成した妖艶な表情の遊佐子。
千歳にとって遊佐子の存在はいつしか尊く、愛しい存在になったいた。
そんな遊佐子を凌辱しているこの時間は夢の世界なのだろうか。
いや、この時こそが揺らぐことない現実なのだ。
獣のように遊佐子を求め、欲望のまま嬲るこの時こそが決して揺らぐことない現実であり、遊佐子に対する千歳の愛の咆哮そのものなのだ。