キライ @-2
「前田、今日、日直だろ?これ先生から預かってきた」
大迫は涼子に私を殴ったプリントの束を渡すと、私の頬をグニっとつねった。
「減らず口にはお仕置きだ」
痛いっ!
でも、声に出すと大迫に負ける気がしたからグッと我慢した。
ヒリヒリする頬を擦りつつ、心の中で思い切り叫んだ。
『性格悪男めっ!いつか泣かしてやるっ!』
1日ムカムカしつつ、涼子と下校する。
あれ?あれ?
私が制服のポケットやカバンを探っていると涼子が訊ねた。
「香奈?どしたの?」
「携帯が…ないみたい」
「教室に忘れてきたんじゃないの?」
呆れた口調の涼子に
「そうかも…。ちょっと取りに行ってくる。先に帰ってて」
頷く涼子にごめんと手を合わせて慌てて教室に戻る。
自分の席に辿り着くと、机の中を覗き込む。
ないなぁ…。
席の周りに落としてる様子もないし、先生に持ってかれちゃった?
前も一度先生に取り上げられた事があって、先生だとマズイよね…。
うーん。
どうしよう?
諦めきれず机の横にしゃがみこんで床に落ちてないか探す。
下を向き、机の周りをウロウロしていると何かにぶつかった。
先生?!
慌てて顔を上げると、そこには大迫が立っていた。
先生でも困るけど、大迫も困る。
困惑と嫌悪の混ざった顔の私を見て大迫が言った。
「これ、探してんだろ?」
大迫が目の前にぶら下げているのは私の携帯!
スカートを払って立ち上がった私は大迫を見上げる。
「机の上に置きっぱなしだった」
帰る時に置いたのをそのままにしてたのか…。