ガリガル3!!-3
「なっ!違うわ!」
誰のためにあたしは可愛くなろうって努力してると思ってんの。
さっき思い浮かべた人物と目の前にいる人物が一致する。
海がふあ〜っ欠伸をしてからあたしに向かってニッと笑った。
「寝癖かと思った」
「ふんっ、死んでしまえ!」
憎まれ口を叩いた表面とは全く逆で、あたしの心臓はドクンドクンと大きく鳴っていた。
笑った海は本当にキラキラしている。高校に入学して初めて見た時は、こんな輝いた人がこの世にいるなんて思わなかった。
あたしの目は三年間、ずっと海を追っていた。ただの憧れが海を知る内に段々と好きになっていった。
海は男女問わず人気があって、誰にでも平等。だからこそ、特別な女の子になりたいと思って、一生懸命自分磨いて、巻き髪だってしたのに…。
「はぁ。寝癖…」
海は可愛いなんて微塵も感じてないんだと思うと切なくなった。
「悪い悪い!」
海がパンッと顔の前で手を合わせた。
「いいよ、もうこんな髪してこないから」
俯くあたしに海の腕が頭を包むように伸びてきた。
「え〜…」
その手はゆっくり前に動かされて、あたしの髪の毛が巻き込まれてゆく。両方に分けられた毛先を掌で抱えるようにして腕が止まった。
目の前の顔がシュンと曇る。
「俺、このフアフア寝癖結構好きだけどな」
海の掌があたしの髪を軽くクシュクシュと揉んで、名残惜しそうに離した。
フアッとあたしの胸元に垂らされた毛先が踊る。
「あ、そう…」
何が起きたか分からなくて、今の出来事を頭の中でもう一度繰り返す。
まだ髪の毛を撫でられた感覚が残っていて…。
あたしはブアァッと赤くなっていくのが自分でも分かった。時間差で鼓動が早く鳴り出す。
好きだってあたしが言われた訳じゃないのに…。
「私、もう行こ〜っと」
あたしと海をチラチラと見ながら風子は、例のネコ顔で自分の席に戻っていった。
「寝る!」
あたしは恥ずかしくて机に伏した。
「おう、一生寝てろ」
そう言って笑う海が想像出来てしまって、あたしはギュッと目を閉じた。
それでも瞼の裏では海があたしを笑っていて。負けずに閉じていると、あたしは本当に眠ってしまっていた。