投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 613 飃(つむじ)の啼く…… 615 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…最終章(中篇)-6

「どんな気分なんだ?狗族の女…圧倒的な力を前にして、それでも戦うしかない状況におかれて?」

「うるせえ!」

野分は地面を蹴った。その動きも、真田たちには追えなかったが、子供はいとも簡単に上半身を傾けて飛んできたものをかわした。

真田に見えたのは、子供の体を狙ったものの、かわされて斜め後ろの床に刺さった野分の刀。一瞬にも満たないような時間差をおいて、刀の飛んできた真逆の方向、子供の背後から野分が飛び掛った。

―取った!

しかし野分は、首に噛み付いた何者かに動きを止められ、つるし上げられた。それは…子供の腰から伸びる、尾のようなもの。

「かすりもしないね、狗族」

「く、そ!」

「野分!」

体勢を立て直した小夜が正面から飛び掛るも、にゅっと伸びた子供の腕に首をつかまれて、宙に吊るされた。

―圧倒的だ…

あの子供は、その場を一歩も動いてないんだぞ…なのに…。

人に似せた姿をしていたものの、化けの皮がはがれたように、野分を捕らえる尻尾と、小夜を捉える腕の形は化け物じみた鱗と黒い物質で覆われていた。

「力の差はわかったかい?僕に牙をむいたことを後悔しながら死ぬ準備は出来たか?」

真田は河野のほうを見た。河野は真田のほうを見ていた。そして、小さく頷いた。

「おい!」

少年は、楽しみを奪われた不機嫌な顔で振り向いた。

「なんだよ、人間」

「その二人に手を出すな…そいつらが死んだら、俺たちも舌を噛んで死ぬ!」

「ふうん。死ねば?」

凍るような目に射抜かれて、真田の舌は一瞬凍りそうになる。その間を、河野がフォローした。

「いいのか?おれたちが死んだら、せっかくの秘密の情報が水の泡だぜ」

少年が冷静に言う。

「そんなもの、ないくせに」

―バレてる!?

焦る真田をよそに、河野は舌に潤滑油でも注いだみたいに喋りまくった。

「なんで普通の人間が二人も、しかも護衛までつけてここに居るか分からないのか?俺たちは、おれ達にしか出来ない秘密の任務を遂行している最中なんだぞ」

河野は堂々と言い張り、真田は終わりを覚悟した。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 613 飃(つむじ)の啼く…… 615 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前