「ストロベリークリーム〜Chocolate〜」-2
「あーぁ、僕の運命の人…いつ来るのかなぁ」
「来る?『会える』ではないんだね」
いつからそこにいたのか、愁がふっと笑う
でも僕は驚かない。愁はそうゆう奴だから
「うん。『来る』なんだぁ」
「運命の人より、店の前の掃除をしてもらおうかな」
にこにこしながらほうきを手渡す
「はぁーい」
…まったく、愁は読み取れない
それにしても寒いなぁ
僕がせかせかとほうきを動かしていたとき---
一人の女の人がこちらに向かって歩いてきた
…あ、あの人は……
***
「…でね、竜がぎゅって抱きしめてくれてね、」
私の目の前では、小さくて可愛い唯ちゃんが、何度も同じ話を繰り返す
女の顔になって帰ってきたと思ったら…
唯ちゃんと「A.S.」の竜はどうやら上手くいっているらしい
まぁ、真っすぐで純粋な唯ちゃんと、照れ屋で単純な竜はお似合いだけど…
「ちょっとー杏子さん聞ぃてる?」
「きーてるきーてる」
…実は私が唯ちゃんにした話には少し嘘が含まれている
私は、喫茶店「A.S.」に入ったことはないけれど、何度も前を通って中を見たことがあるから状況は把握している
店の中を、というより、一人の人を見ていたんだ…
…でも、目当てがはっきりしている私が行くのは恥ずかし過ぎる
もう大人だし、いかにもって感じで。
でも…直接話してみたい
…ちゃんと、笑ってほしい…
「杏子さんもえーえす行ってみればいいのにー」
…それだ!
「唯ちゃん、私も『A.S.』行ってみればいいと思う?」
「?うん、そう言ったじゃない」
「んーしょうがないなぁ。唯ちゃんがそこまで言うなら、私も行こうかな」
「ぃや、そこまでっていう程は…」
「唯ちゃんに勧められちゃったら行かないわけにいかないもんね。
私、『A.S.』に行くわ!」
「…?」
私は唯ちゃんに言われたから行くのよ
行くきっかけを探してたとか、全然そんなんじゃないの