未完成恋愛シンドローム - 片翼 --12
「イヴも舐める?」
「嫌」
―アホか・・・。
「んで、これを出すのが射精で、自分で出すんがオナニー」
「つか、そんなんなんに使うねん・・」
軽い頭痛を感じながらも聞いてみる。
「おー、そうそう。いいトコ気付くやん」
―誉められるようなことか?
「この男が出す精液の中に入ってる精子ってヤツと、女が造る卵子ってのが合わさると―」
「・・・合わさると?」
「赤ちゃんが出来る」
「は?」
・・・なんか、割と大事な気ぃすんねんけど。
「じゃあ仮に、今お前の手についてるその精液が、例えばクラスの女の子の卵子ってヤツと合わさったら、赤ちゃん出来んの?」
「そりゃ出来ひんでしょー」
―は?
「いってることちゃうやんけ・・」
「せやから、そこで子供造る時にすんのが、セックスってヤツ」
・・・。
一言も聞いてないぞ。
あ、でも、どっかで聞いたことある気はする・・・。
「さっきイヴにやったみたいに、ち○ちん固くして、女のま○こに入れて、精液出して・・・どしたん、頭抱えて?」
「いや・・・」
―話が生々し過ぎるっ!!
「と、取り敢えず、精液って、大事やねんな」
なんか全然違う気がするけど、どうにかまとめようとする。
「んー、まぁ。で、精液が溜まり過ぎひんよーにオナニーで出して・・」
―ああそれで・・・ん?
下で玄関が開いた音がする。
『ただいまー。イヴー。カイトー』
母さんの声。
「あれ?今日おかん帰って来るん早ない?」
そういいながら壁の時計を見るカイト。
・・・。
「9時半・・・?」
思わず呟くオレ。
確かさっきカイトが来たのが、6時前とかだった気がする・・。
「あー、思わず長居してもーたわー」
いつの間にかカイトは、顔や手についた精液をウェットティッシュで拭き取り、そのまま立ち上がっていた。
「早っ。ていうかお前、髪の毛にもついてる」
「え、マジで?」
「うん」
―まぁそりゃ、あんだけ至近距離で射精したしな・・。
「うわー、このまんま風呂入る気満々やったのにー」
「・・別に、入ればいいやん」
髪の毛を摘み、ティッシュでかかった精液を拭き取っているカイトにいう。
「あかんねんてー。精液って、お湯につけたら固まんねんからー」
・・・へ、へぇー。
「あー、どーしょー・・髪の毛にこびり付いたらなかなか取れへんしなー・・」
溜め息混じりに呟くカイト。
―ん?
「・・・カイ」
『うちのご飯がないー』
・・・・しまった。
口を開こうとした瞬間、1階から聞こえて来た母さんの声に、初めて今日何も作っていないことに気付いた。
「じゃあオレ先に下降りてるから」
「あ、うん」
ぱっぱと身なりを整え、既にドアノブに手をかけているカイトに、聞こうとしたことを切り出すタイミングを失う。
「顔の精液もちゃんと拭き取りやー?」
「う、うっさい!判ってるわ!」
「あははー。んじゃお先ー」
そういうと、カイトは部屋を出てパタパタと下へ降りて行った。