万華(その4)-1
その画廊の地下室は、都会の騒々しいビル街にあるとは思えないような静寂に包まれていた。
剥き出しのコンクリートの灰色の壁に囲まれた部屋には、厚い暗闇に包まれた高い天井から垂
れ下がった錆びた鎖の影が飴色の灯りの中でわずかに揺れ動いていた。
そこは、凍てついたような冷気の漂う灰色の密室だった。
燿子は椅子から立ち上がると、その黒く薄いショーツを滑らかな足先からゆっくり脱ぎ捨てた。
乳白色のむっちりとした太腿の付け根には、こんもりとした漆黒の繁みに覆われた秘丘が露わ
になる。その繊毛の毛先は艶々と輝くような湿り気をもっていた。
それは羞恥の源というより、どこか淫猥で挑発的な形をもった鬱蒼とした繁みだった。
何とも言えないような悩ましく縮れたふくらみを持ちながらも、深みのある濃艶さをもち、
その奥に秘められた熟した女の潤んだ割れ目が、うっすらと薄衣に包まれているようだった。
僕はその太腿に頬ずりをしながら、燿子の甘い膨らみをもった淫毛に引き寄せられるように、
その翳りに唇を寄せようとした。
「まだ、そこはお預けなのよ…ほんとに厭らしい子豚さんね…」
「ごあいさつに私のお尻を舐めるのよ…」と、燿子は僕の顎をしゃくり上げ、体をひねりながら
僕の顔にその豊満な臀部を突き出した。
ぶるりとその張りのある蒼白い尻肉が揺れる。
僕は後ろ手に手枷で緊めあげられながらも体をくねらせ、燿子の背後に跪き、ゆっくりと燿子
の艶やかな弛みのない尻に頬を寄せた。
なみなみとどこまでも白い光沢をたたえた量感のある双臀… そして縦に双臀を深く割る細い
翳りが股間に続いていた。そのわずかにほの昏い窪みさえ妖しい色気を漂わせている。
ムチムチとした肉感のある尻肌が僕の愛撫に合わせるように上下に動く。舌に吸いつくような
ねばりのある尻肌だ。その尻肌に押しつけた僕の鼻に、どこか冷たく湿った香水の匂いがするよ
うだった。
「あ…っん…」
燿子が微かな喘ぎ声を洩らす。この女は臀部の肌に敏感に感じるようだった。むっちりとした
丸みを帯びた双臀は崩れることなくその形を保ち、肌理の細かいどこまでも柔らかく雪のような
肌をしていた。
しだいに僕の胸の鼓動が高まり、再びヒクヒクと股間が疼き始める。僕は舌をその肌にねっと
りと這わせる。湿った粘り気をもった餅のように、その肌が僕の舌に絡みつく。仄かな艶をもつ
愛しいほどの燿子の尻肌を僕は震えるような舌先で掬い上げるように愛撫を繰り返した。
「ああっ…あっ…」と、女は小さく嗚咽を洩らす。
それはやがて尻の蕾に迫る僕の舌を予感しているかのようだった。
僕はその皮膚を唇の先で咥え、そしてときに鶏の嘴で突くように愛撫を続けた。圧倒されるよ
うな燿子の臀部の肌の重みに、僕は心地よい息苦しささえ感じていた。このままずっと燿子の尻
の柔らかい肌に顔を埋めていたい…僕は息を潜めるように鼻先と唇をゆっくりとその肌に深く沈
めていく。そしてその尻肌を優しく秘めやかに唇で揉みあげ、ときに針のように歯を立てて咬む
痛みを交互に与えることで、女の尻が敏感に熱を帯びていくのだった。
ふと僕はあの喬史さんの舌が優しく僕の肌を愛撫してくれたときのことを思い出す。
あのときすでに喬史さんは知っていたのだ…僕と喬史さんが決して恋人同士にはなれないこと
を…あの喬史さんの舌がどれだけ優しく僕の薄い胸の肌を愛撫しても、僕たちのお互いの肌が、
何かの液体のように溶け合い、混ざり合い、そしてその粘りを増していくことはなかったのだ。