「ストロベリークリーム〜Coffee〜」-2
ん?待てよ…?
「杏子さん」
「何よ」
「…私、毒見役じゃないよね?」
私の言葉に、えへへーと不自然に笑う。
「やっぱり!ひどーい!」
「だって私も興味あるんだもん。
まぁまぁ。別に行かなくてもいいんだしさ」
杏子さんはけらけら笑ったけど、私は少し行ってみたくなってしまった。
***
「えーえす、えーえす」
はじめてのおつかい、みたいにつぶやきながら探す。
わっかりにくいなぁ。この辺のはずなんだけど…
私の眉間のシワが更に深くなったとき、唐突にその店を見つけた。
「…えー…えす…」
そんなに大きくない看板に可愛らしい文字で『A.S.』とだけ彫ってある。
見かけは洋風で、外まで良いにおいがしてきた。
「わぁ…すてき」
私の頭からは本来の目的など吹っ飛び、バニラの香りに引き寄せられていった。
そのとき-----
…カラン
中から店員らしき男性がほうきを持って出てきた。
背がすごく高くて赤毛で目つきの悪い…
竜…だ…
その風貌とカフェの制服は全く噛み合っていなかったが、綺麗な顔立ちに良く似合っていた。
「すてきぃ…」
竜は私に気付いたのか顔を上げると、なぜかこちらを睨みつけた。
な、なによぉ
私はその鋭さに一瞬怯んだが、すぐに睨み返した。
この眼、ちょっとあいつに似てる…
…むかつくっ
元彼を思い出して怒りが再燃し、竜のいる方向にずんずん歩いていった。
「ケーキっ!食べたいんだけど!!」
「中で言えよ」
竜は私の目を見ずに親指で中を指す。
低くて少しかすれた声に聞き惚れるより、怒りが勝った。
感っじ悪〜!!!
私が少し何か言ってやろうと思ったとき、中からもう一人、男性が出てきた。