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trick or xxx
【学園物 恋愛小説】

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trick or xxx-2

「藍ちゃん、藍ちゃん」
ちょいちょいと、バカ会長は私に向かって手招きをしている。
「な、何よ?」
強烈に……嫌な予感がする。
「いいから、いいから。こっちおいで!」
「ヤダ」
「なんでさ?」
「だってアンタ、絶対に何か企んでる」
「企んでないから、こっちおいで!」
「ヤ・ダ!」
強く言ってから、私はクルッと背を向けた。
あの表情は、絶対に何かを企んでるに決まってる。
断固拒否してやるんだから。

「ふぅ、仕方ないね」
背後から、諦めた様なため息が聞こえる。
諦めてくれたんなら、万々歳!
さっさと帰れ、バカ会長。
すると、バサッと頭に何かがかけられた。
視界が一瞬、黒い物体に遮られる。

「え?な、な、何っ!?」
「何って、暗幕」
「はぁ?何考えてんのよ、ちょっと」
私は邪魔な暗幕を頭から剥がそうと、身をよじった。
背後に聞こえていた声が、いつの間にか、また正面に聞こえている。
「いやね、藍ちゃん、似合うだろうな……って」
「はぃ?」
暗幕が似合う人間なんて、どこに居んのよ?
コイツ、もしかして……嫌味言ってんの?
「うん。やっぱり藍ちゃん、超似合う!その怒った時の表情、魔女のイメージにピッタリ!」
魔女、ですとぉ?
喧嘩売ってんのか、コラ!
怒りのバロメーターがどんどん上がる私をよそに、バカ会長は暗幕を被ったままの私を眺めながら、うんうんと満足気に頷いている。

「『トリック・オア・トリート』って言ってみ?」
「なんでそんなコト、言わなきゃいけないのよ?」
「わかってないね、藍ちゃん……今日は何の日?」
「え?」
「ハロウィンでしょ?しかも魔女と来たら、言うしかないでしょ!」
なんでそうなるのか、全く理解出来ない。
それなのにバカ会長は、『さぁ、さぁ!』なんて言いながら、期待度満点の瞳をこちらに向けている。
……分かったわよ。
言えば良いんでしょ、言えば。

「トリック・オア・トリート」
「ふふっ、よく出来ました!んじゃ、ご褒美!」
チュッと音を立てて、何かが頬に触れる。
一瞬でよく分からなかった私の目の前に、ニヤニヤしたバカ会長のドアップがある。
「おや?もしかして、ご褒美が足りなかった?」
「なっ!」
私は反射的に、触れられた方の頬を押さえて身を引いた。
全身の血液が、沸騰してしまったかの様に熱い。

「ふっ、藍ちゃん、可愛いねぇ!」
笑いながらバカ会長は、私の頭を暗幕越しにワシワシと撫でる。
「そんな藍ちゃんに、一つだけ忠告。あんまり遅くまで一人で残ってちゃダメだよ?じゃないと、黒ずきんちゃんだって狼さんに食べられちゃうから!んじゃ、お疲れ〜!」
言い終わるや否や、バカ会長は鞄を抱えてさっさと帰ってしまった。
残された私は、暗幕を被ったままでその場にへたり込む。
文句すらも、出て来やしない。
だって、頬に生々しい感触が残っている。

甘い甘い、これはトリック(イタズラ)?
それとも……


− FIN −


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