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trick or xxx
【学園物 恋愛小説】

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trick or xxx-1

毎年、文化の日に大々的な文化祭を行っているうちの高校では、今、準備の真っ只中。
ここ数日の放課後は決まって、最終下校時刻まで沢山の生徒が残っている。
みんな、文化祭当日に間に合わせるために大変みたい。


「すんませーん、2−3なんスけど、暗幕貸してもらえませんかー?」
「家庭科室の使用許可ください!試食会したいんです!」
「副会長、教頭からこんなメールが届いてますけど……どうしますか?」
みんなが慌ただしく動いている間、我が生徒会室はというと……負けず劣らず、戦場と化している。
むしろ、私個人でいうと、確実に私の方が忙しいと思う。

「あ゛ーっ、わかったから!暗幕は書記の西くんに在庫数を確認して!家庭科室は、明日の昼でも大丈夫?あと、メールは……って、んなの、会長に見せなさいよ」
「だって、会長、居ないんですもん」
「はぁっ!?アイツ、またトンズラしたの?ホント、使えない……」
私の忙しさの原因は、ほとんどアイツのせい。
生徒会長であるアイツがすぐどっかに消えちゃうから、その分の仕事も全部、副会長である私の所にまわって来ている。
ホント、いい迷惑よね。
普段から仕事しないんだから、こういうイベントの時くらい、しっかり働けってカンジ!


「お疲れさまー!いやぁ、藍ちゃん、今日もよく働いてたねぇ……有能な副会長さんが居てくれて、会長さんは嬉しいよ」
最終下校時刻が過ぎて、私以外の生徒会役員も皆帰った頃……やっと、諸悪の根源が帰って来た。
私は誰かさんのせいでこんな遅くまで帰れないってのに、ずいぶんと呑気なもんよね、まったく。

「無能な生徒会長さんは、今日はどこでサボっていやがたんですかねぇ?少しぐらい、働いてクダサイ」
「ははっ、もしかして藍ちゃん、怒ってる?」
「当たり前でしょっ!?誰のせいで帰れないと思ってんのよっ!最終下校時刻、もうとっくに過ぎてるんだからっ!」
「それはそれは。ちゃんと先生には、居残りの許可もらったかな?じゃないと、怒られるのは俺なんだよねぇ……」
はぁ?
“怒られるのは俺”だとぉ?
「自業自得でしょうがっ!そんなに怒られるのが嫌なんだったら、自分の仕事くらい自分でしやがれっ!」
「つれないねぇ、藍ちゃん。それに俺だって、全く仕事してないってワケじゃないんだよ?ほら、コレコレ!」
そう言ってバカ会長は、得意気に真っ黒な布を広げてみせた。

「は?なにコレ?」
「見てわかんない?暗幕だよ、暗幕!倉庫ん中で偶然見つけてさ、洗ったり直したりしてたのさ!ほら、数が足りないかもって、西が言ってたでしょ?」
そりゃ、一週間くらい前に確かに言ってたけど……
「もうそれ、大丈夫になったんだけど。実際に希望をとったら、暗幕を使うクラスが意外と少なかったから」
「へぇ!そりゃ、ラッキー!じゃあ、コレ、どうしよっか?」
どうしよっかって言われても……
「また元の場所にでも仕舞っておけば良いじゃない」
「でもさ、コレ、洗濯したばっかだから、いい匂いするんだよね……」
「はぁ?そんなの、知ったこっちゃないわよ。出しておいても使い道が無いんだから、邪魔なだけでしょ?」
「使い道、ねぇ……」
ああ言えばこう言うバカ会長は、顎に手をやって何やら考え始めた。
そしてその姿勢のままチラッと視線だけをこっちに向けると、急にニヤッと嫌な笑みを浮かべる。
背筋に、冷たい汗が伝う。


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