Kiss me please!-8
翌日。
一応待ち合わせ場所で落ち合ったものの、お互い気まずい雰囲気で下を向いている。
琉にすれば望が怒っていると思っているし、望は琉とのキスが嫌ではなくなってきている自分に戸惑っている。
いつまでもこうしている訳にもいかないと思った琉が口を開いた。
「あっ、あのさー、今日はその…治療費払わなくていいからさ」
顔を挙げた望から視線をそらして
「昨日…先払いでもらっちまったし…」
「う…ん、わかった」
じゃあね、と背を向けて帰ろうとする望の腕を琉は思わず掴んでしまった。
困惑顔で振り返った望をそのまま腕の中に収めた。
「琉!?」
望の問いかけにも答えず無言で抱き締める。
俺、何してんだろなー。
望の後ろ姿を見て帰したくなくなったんだ。
もうすぐ怪我も治る。
そうしたらもう望と会えなくなるんだろうか…。
「琉!こんなとこで恥ずかしいよ。離して」
望の困ったような焦ったような声で思わず腕を離した。
「あー、ごめん」
「琉、何か昨日から変だよ?」
「ごめん、ごめん」
「変なの」
やたらと謝る琉に思わず笑ってしまった。
変な琉。
だけど私が今どれぐらいドキドキしてるか知らないでしょ。
気まぐれでも、もうこんな事しないでほしい…。
このままじゃ琉と離れたくなくなるよ…。