Kiss me please!-7
「んー!」
嫌々するように首を振ろうとする望の後頭部に掌を移し、しっかり捕まえる。
その間も琉の唇は望の唇を食み口内を舌が這う。
先ほどの優しいキスとは全く違う激しいキスにどちらの物ともわからない唾液が望の口端から伝った。
ようやく唇と腕を解放された望は琉を平手で打った。
「琉のバカっ!」
一目散に逃げ去った望の後ろ姿を見ながら打たれた頬を琉はさすった。
望が元彼に別れを告げられた日。
琉は望達の隣の席にいた。
男の方は背を向けていて顔は見えなかったけど、望の顔はよく見えた。
涙一つ溢さず、怒る風でもなく淡々と別れ話をしていた望を見て、気の強い女だなって思った。
望が席を立った後、何となく気になって付いて行った。
平気な顔をしてたくせに、信号も見ずに交差点を渡ろうとした望を思わず助けた。
怪我をしたのは予定外だったが、真剣に心配する望を可愛いと思った。
これで終りにしたくなくて、望に無理難題を押し付けた。
あんな男にまだ未練があるのか、男と横にいた女を見た望の顔が一瞬曇った。
それを見た瞬間、琉の胸の中は無性にイライラした。
一度口付けたら離したくなくなって、一日一回の約束を破って強引にキスしてしまった。
……望、怒ってんだろなぁ…。
明日は待ち合わせ場所に来ないかもしれない…。
琉を打った後、思い切り走って逃げた望は息が切れて道端にあったガードレールに腰かけて休んだ。
心臓がドキドキしているのは走ったからだけではない。
「はぁー…」
大きく息を吐いて呼吸を整える。
落ち着いてきてからさっきの出来事を思い返した。
なぜ、琉は約束を破ったんだろう…。
子供騙しみたいな約束だったけど、今まで約束を破った事がなかった琉を信用し始めていた矢先だったのに…。
元彼に会ったから?
元彼に会った後、何だか不機嫌だった。
でも琉が不機嫌になる理由がよくわからない。
単に治療費と称して毎日琉とキスしてるだけで望は琉のカノジョではない。
琉も子供っぽいところがあるし、自分のおもちゃに手を出されたみたいな気分になったんだろな…。
ま、おもちゃにキスするには激しいキスだったけど…。
望は先程の余韻が残る唇にそっと手を当てた。