Kiss me please!-6
「望じゃね?」
声の方向に顔を挙げるとそこにいたのは先日望をフッた元彼だった。
しかも一人じゃなく、その腕には女の子が腕を絡めている。
これが新しいカノジョかぁ…。
「久しぶり…」
「なーんだ。お前も彼氏いるんだ。心配して損したな」
心配なんてしてなかったくせに!
それに琉は彼氏じゃないし!
ムカっとしたけど顔には出さずにカノジョに目をやった。
「カノジョ?お似合いだよ」
元彼はデレデレした表情で、またなと言って去って行った。
望がふーっと溜め息をつくと、それまで黙ってランチを食べていた琉がレシートを手に立ち上がる。
「行くぞ」
慌ててバッグを掴んで立ち上がった。
いつもは軽口を叩く琉が無言で先々歩く。
それを望が小走りで付いて行く。
琉は道から外れた小さい公園に入って行った。
今日はここでキスするのか…。
ベンチに座った琉の横に腰掛ける。
「あれって元彼?」
怒ったような声に望の体はピクっと跳ねた。
「うん…」
「つまんねー男だな」
「…かもね」
何だか琉の方を向けなくて望は下を向いた。
「じゃ、治療費もらおっかな」
さっきの声と変わっていつもの明るい声に安堵した望は頷いた。
琉の手が望の頬にかかり唇が近付き、そっと目を瞑った望の唇に優しく触れた。
肩を抱き軽く唇を食んだ琉は一旦唇を離した。
これで今日の分は終わりと、気を緩めた望の肩を離さずにまた口付けてきた。
一日一回のはずなのに、しかも今までその約束を破った事がなかった琉なのに。
驚いて、琉の胸を両手で押し返そうとしたが琉は空いてる手で望の両手首を掴んで抵抗を防いだ。