Kiss me please!-5
「………何でもない」
「そっ。じゃあまた明日ね」
「うん…」
解放された望は琉から離れて行った。
その後ろ姿を見送りながら琉は呟く。
「俺って…キス下手なのかな…」
一方、琉から離れた望は胸の鼓動が激しくなっていた。
何で琉にこんなドキドキすんのよ!?
もうすぐ琉の怪我は治る。
そしたらもう琉とキスしなくて済むし会う事もない。
清々するじゃない!
きっと毎日キスして情が移ってるだけ。
ちょっと真剣な目で見られたから驚いただけ。
望は自分にそう言い聞かせた。
「望!」
翌日、いつもの待ち合わせ場所に行くと琉が手を振っている。
待たせたかと慌てて駆け寄る望に尋ねた。
「ちょっと時間ある?」
「えっ?」
「俺、昼メシ食ってないの。よかったら付き合ってよ」
もしカノジョがいてもご飯ぐらいはいいよね。
「うん」
望は頷いた。
案内されて席に着くと望は何だか落ち着かなかった。
こうやって一緒にいるのは初めてだ…。
いつもは待ち合わせて、その後すぐ人目のつかない所でキスするだけ。
それが目的なんだから終わればさっさと帰る。
だから改まってこうしていると落ち着かない。
望の胸の内を知らない琉は呑気な口調で言う。
「こんな風にしてるのって初めてだな」
望は目をそらして頷いた。
「望?」
「あっ、ご飯来たんじゃない?」
ごまかすように言った。
周りの女性客が琉をチラチラ見ている。
ま、カッコイイもんねぇ…。
その琉の前に座っている望は、注がれる女性客の痛い視線に落ち着かなげにジュースを飲んでいた。
その望の頭の上から声が降ってきた。