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小説・二十歳の日記
【純愛 恋愛小説】

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小説・二十歳の日記-5

  七月二十日  (曇り)

曇り空の今日。まるでこの僕の心そのものだ。

曇り空、いつか降るだろう雨を、大きな広がりのどこかに隠している。
いや、ひょっとして降らないのかもしれない・・・

今朝、今にも降り出しそうな空で、仕方なく傘を持って出たよ。えっ?相合い傘を期待したのかって?うーん、どうかな・・、ちょっとはあったかな・・。で、家路に着く迄の間、この傘の何と恨めしかったことか!折り畳み式の傘ならまだしも、親父譲りの古いコウモリ傘は、いかにも不恰好だ。
初めてのデートだというのに、彼女にも笑われた。

今夜は、もう寝る。


  八月一日  (晴れ)

僕は、文学を愛好する一人の青年だ。当初は、当然のごとく読者だった。今は、創作する側にまわっている。もちろん、少しは本も読んでいる。僕の小説狂いは、小学生の時に発する。担任の先生に、作文を誉められたのがきっかけだ。先生の、
”日記を書いてみなさい”という一言からの日記は今も続いている。

今日、水中見合いなるものを聞いた。アクアラングを背負っての見合いらしい。当然しゃべれない。身振り手振りでの、会話?海底にテーブルと椅子を置いているらしい。キチンと行儀良く座ってのことらしい。難しいだろう、それは。けれど、どんな意味があるのだろう。お遊びだろうか・・・。幻想的ではあるだろうが。

あぁ、だめだ。今夜も又、寝る!

  八月三日  (晴れ)

大分落ち着いてきた、ような気がする。が、まだわからん。

一昨日、課長に叱られた。
“ミスが多すぎる!”
“気の緩みだ!”とも、言われた。僕だって人間です!と、言い返す気力もない。黙ってなだれていると、
“元気が無い!”と、また叱られた。そうなんだ、正直のところちっとも身が入らない。

不思議なもので、体調の良いときには何をやっても誉められる。多少のミスをしても、不可抗力だと言ってもらえる。しかし一旦歯車が狂うと、何をやっても駄目だ。もがけばもがく程、深みにはまっていく。

”一体、どうした?”って、聞くのかい。こっちが知りたいよ。彼女に傘のことで笑われたせいじゃない。この前のデートが、休日出勤でオシャカになったせいでもない。いや、少しはあるかも?
 
だめだ。どうにも走馬燈のようだ。グルグルと堂々巡りをして、いよいよ沈んで行く。

最近、ゲバルト活動の新聞記事をよく見かける。彼らの主張が正しいものかどうか、僕にはわからん。信念に基づいての行動は立派だ。しかし 独善的すぎる点は、残念だ。現実の生活に満足し得ない、血気にはやる若者が、ゲバルトという夢想的な境地の中でもがいているように見える。けれども、打ち込めるということは、羨ましい。


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