1・2・3-16
十三
サヤカちゃんの誤解を解けないまま今日から夏休み、そして今日は花火大会だ。
市川君、今日告白するって言ってた…大丈夫かな…
…告白か…
‘バカじゃねーの
’翔ちゃんの姿が浮かぶ。
だめだ…怖い…振られるの分かってるし、私、あきらめることも出来ないし…
自分が嫌い、サヤカちゃんの事も…サヤカちゃんを傷つけて誤解をとくことも出来ない。
私、重たい足取りで花火大会がある中央公園へ向かった。
お母さんに肩までしかない髪をあげてもらい着付けをしてもらった。
待ち合わせ場所は桜並木の終点場。
時計台を通り過ぎ、サヤカちゃんと市川君が見えたところで、私の足は止まってしまった…
二人と楽しそうに話してる翔ちゃんの姿があったからだ。
その隣には当たり前のように涼子ちゃんがいる。
涼子ちゃん大人っぽい…
私の足どうしても動かない。
だめだ、あの中に入る勇気がない…
私、携帯を出してサヤカちゃんに電話した。
「リコちゃん、いまどこにいるの?早くおいでよ」
「あ…うん…それが…来たには来たんだけど…なんだか気分が悪くて…」
私、みんなに背を向けて歩きだした。
「大丈夫?」
「今日は帰るね…」
「あっ待って、リコちゃん話があるの」
「ごめん…今日は…ごめんね」
私、電話を切った。
翔ちゃん…
私、翔ちゃんを好きでいていい?
好きでいるだけだから…邪魔しないから…だから、だから…翔ちゃん…
私、南口へたどり着いた。だけど、考えるのに疲れ、門へもたれ掛かった。
行き交う人はみんな楽しそうで、みんなの笑い声が遠くに聞こえる。
薄明るかった辺りがすっかり暗くなり、更に人数が増したように思う。
「ねぇ、一人?だったら俺らと一緒に見ようよ」
え?
私、顔をあげるとそこには知らない男の人が二人立っていた。
茶髪だし、ピアスとかしてるし…
え?こっ怖い!!
立ち去ろうとした私の腕を一人が掴んだ。
いやっ!!
振り切ろうとするけどびくともしない。
「一緒に花火見るだけだよ」
「…っ」
声が出ない!!やだっやだ!!
「ねぇ、そんな怖がんなよ」
ドンッー
!!
大きな音と共ににぎられた腕が軽くなった。
「俺の連れに何か用?」
翔ちゃん!!
私を掴んでた男は翔ちゃんに胸ぐらを掴まれ、門へたたきつけられていた。
「いっいや、一人だと思ったから…」
「行こうぜ…」
見回りの警察の姿があったからか、二人の男は足早に去っていった。
「大丈夫か?」
私、小さくうなずいた。
まだ、体の震えが止まらず心臓がバクバクしてる。