好奇心と共に-1
―――夜。
俺、齋藤崇は一人部屋で大きなため息をついた。
「あーまたやっちゃったよ…」
手を広げると、くちゃ、と音がした。
ねばねばしたものが張り付いている。
先程まで、俺の中にあった物だ。
「はぁ…」
自慰をすることは悪くないと思う。
でも、あの子を思い浮かべてするようになってからは、したあとに少しばかり罪悪感と後悔が生まれる。
でも、彼女の淫靡な姿を想像せずにはいられない。
軽やかで何にも捕らわれないようでいて、妙な色気がある、笠井のことを。
***
同じクラスの笠井ゆりと初めて会ったとき、不思議な奴だ、と思った。
感情をあからさまには出さないが、人当たりが良く、男にも女にも変わりなく接した。
しっかりしていたが、時々間が抜けていることもあり、何を考えているのか分からなかった。
クラスの中ではどちらかと言えば地味なグループ、という扱いだが、堂々と地味だった笠井は充分変な奴だった。
ごく普通のはずなのに、全く普通じゃない彼女を、俺は初めから好きだったのかもしれない。
でも、俺がはっきりと彼女を意識したのは、ある日の授業中だった。
***
高橋の数学は、公式を覚えさせて問題集をやるだけの退屈な授業だった。
指定のページを解き終わって、何気なく笠井のほうを見ると、彼女の方ももう終わったようだった。
笠井は考え事をするとき指で口の辺りを触るのが癖らしく、時折あごを軽く叩いたりしているのを見たことがある。
その日もいつもの癖だな、と思ったのだが、いつもとは少し動きが違った。
口の辺りに手をやり、とん、とんと叩いた後、唇をゆっくりとなでるように触れた。
俺は吸い込まれるようにその動きに見入った。
気のせいか、いつもより表情が熱っぽく見える。
じらす様に唇に触り、軽く指を口付けた後…
………指を舌が這った。
…舐めた…!?なんであんな…
最初は軽く、少しずつ深く、指のほうも口に入れた。
唾液のたっぷり付いた指が時々出てきて、唇を何度も往復し、生々しく光らせた。
その指が離れたとき、白く光る糸が見えた――――――