「僕とアニキの家庭の事情・5」-10
「つかさー、馨ー」
「ん?」
少し自分の世界に入りつつ、ふとコーラを飲んでいる馨に声をかける。
「オナニーって良くする?」
ぶふぉっ
盛大にコーラを噴き出す馨クン。
「ん?」
しれっとしながら顔を覗き込む。
「なにをイキナリ・・・」
薄く涙を浮かべ、軽く咳き込みながら横目でボクを見てくる馨。
「いや、ダレだってやるじゃん?オナニー」
「オナニーオナニー連呼すな!」
恥ずかしいのか、微かに顔を赤らめつつ声を荒げる。
んー・・・。
でも、確かに馨がY談(?)とかに首突っ込んでる姿とか、あんまり見たことがないってゆーか、むしろ想像出来ない。
ボクは基本的にほとんど浮いた話しないし、円は浮いた話って言うか、単にヘンタイなだけだし・・・・。
「あ。」
ふと思い付いた。
「なんやねん、いきなり・・・・」
軽く疲れた口調の言葉が飛んでくる。
「いや、まぁ、ボクたちほぼ一緒に居るじゃん?」
「オレらか?」
「んー、円も含めてねー」
一瞬、視線をボクから反らし、
「まぁ、なんだかんだ居るな」
と、一言。
「だよね」
念を押す。
「なんやねんな」
「いや、なんかボクたちって、全くって言ってイイくらい、浮いた話しないよね」
「・・・・・。まぁ」
・・・・。てゆーか、ほんとに普段、内容のある話してないよね。
「まぁ、単にそー思っただけだけど」
軽く苦笑いを浮かべながら、ボクは言った。
「じゃね」
「おう。見舞い来てくれて、あんがとな」
あれから、なんだかんだと話した後、外も暗くなって来たんで、帰ることにした。
「見舞いじゃなくて、連絡とプリント持ってきただけだよ?」
薄く笑いながら、そんなコトも言ってやる。
「んがっ」
「あははっ。じょーだんじょーだん」
「・・・・」
「またね。」
「ん」
エレベーターまで送りに来た馨に別れを告げ、そのまま降りていく。
「まぁ、元気そうでよかったよね」
誰に聞かせるでもなく、呟いた。
「・・・。ボク、知らない、か」
馨と話してて言われたコトが、脳裏をよぎる。
・・・。
1Fに着き、ふと足元を見る。
「あれ。ヒモほどけてんじゃん」
今まで全く気付かなかったけど、いつの間にか靴ヒモがほどけていた。
「ふにゃ・・」
自分でも良く判らない溜め息をつきながら、ヒモを結び始める。
・・・・・。
「よし」
結び終え、そのまま歩き始める。