ラブシック-逆--2
「無理だって。俺この腕だぞ」
オラ、見ろや。この痛々しい俺の腕。
「キモ」
二文字かよ。たった二文字しかねぇのかよ。
予想外の反応に相当へこんだよ、俺。
そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃねぇかよ!俺じゃなくお前が絞ってたら、お前がこのキモい腕になってたんだぞ。
言わば身代わりなんだからな。その辺分かってんのかよ。
「あ〜痛ぇなぁ。死ぬほど痛ぇ」
「うるさい」
人の心を忘れてしまったのか、お前。冷酷にも程があるだろ。
逆に心配なってくんぞ。
「あ、あった。ここ入るよ」
彼女がそう言ったと思ったら、車は減速無しでぎゅんと右折した。
シートを倒していた俺は少し体を起こす。
「病院?」
「ずっと探してたの」
探してたって、知らない土地で地図も無しでか?
無謀だな。
「行くよ」
「行くよって、飛行機間に合わねぇだろ」
「あんたに死なれちゃ困んのよ」
何だお前。
何だお前。何だお前。
「死なねぇよ。少なくともお前より先には死なねぇよ」
俺がお前より先に死んだら誰がお前を守るんだよ。
「頼んだよ」
彼女がニコッと笑った。
…ったく、怪我したのがお前じゃなくて本当に良かったよ。
【end.】