「瓦解する砦」-10
「随分と早かったな。途中、誰かに遭ったか?」
楼主の問いに舞はかぶりを振る。
「ふぅん。九木に救われたな。九木、道を選んだろう?」
しれっとした顔で九木は答える。
「おや、お見通しでしたか。あまり、大事な“姫”の玉体を晒すのも如何かと思いまして」
その言葉に、楼主は面白そうに鼻を鳴らした。
「ふっ、まぁいい。明日に備えて二人とも今日はもう休め。舞、次はこの程度じゃ済まないからな」
「はい。失礼します」
執務室を出ると、舞はズルズルと座り込んだ。
長い、一日だった。
「何をしてるんです?」
九木の声が遠くに聞こえる。
そのまま、舞は意識を手放した。
苦役から解放された肉体はとうに限界を迎えていたのだ。
「舞さん!舞さん!」
その後、九木に背負われて部屋に戻ったのを舞は知らない。
舞が目覚めたのは翌々日の朝のことであった。