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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-9

「やっぱり、ゥンミー(姉さん)のことを忘れるのは…無理かい?」

叱責されるかとも思った。なんとなく、こういうことは本人の問題だから、足を踏み入れるにはあまりに奥まったところに閉まってあるもののように思えたのだ。

「ああ…難しいな」

ウミカジは、まるで明日はシケだから、海に出るのはやめておいたほうがいいと言う時とさほど変わらない口調で答えた。そして、ぽんとカジマヤの頭に手を置き、

「お前が早く大人になって、お前にそっくりの問題児を沢山こさえてやれ」

そう言って、笑いながら去った。

「うるせっ!」

笑顔で応酬したカジマヤの表情は、兄の姿が見えなくなるのとほぼ同時に曇った。水面に落とした小石が、沈んでいくにつれて見えなくなるように、彼の顔から笑顔は消えた。





「…全員いるか?」

月明かりの中で、わずかな光を集める彼らの目は、海中に棲む魚のそれのようにギラリと光っていた。

「スジュン、ナミカジ、クチブチャー…」

名前を呼ぶごとに、小さくくぐもった返事が闇の中からあがる。

「…フェー、スジョーサン…よし、全員居るな」

確認を終えて、カジマヤがすっと見渡す。自由気ままな性質をもつシーサーが、何か決意を胸に秘めている時の変化は驚くほど著しい。ましてや、そういう目つきをしたシーサーが何人も集まって雄大な海を背にして立っている姿は壮観ですらあった。

「俺たちは今夜、あめりかーの住処を襲う」

押し殺した声でカジマヤが言った。

「奴らが何十年にも渡ってこの島に居座って、これからもそうするつもりなら…俺たちにだって考えがある」

何人かが厳かにうなずくのが見えた。

「当然のように空を飛びまわって、海を汚す奴らには、俺たちも黙っちゃいないってことを教えてやらなきゃいけない」

全員の目が、狗族らしく燃え上がった。しかしその時、近づいてくる足音がしてその場にいた全員が身構えた。もしや、計画を漏らしたやつがいるのだろうか。この計画は、大人にばれていいものではない。しかし、その足音の持ち主は大人ではなかった。茂みを掻き分けて現れたのは小さな女の子だった。

「わたしも連れてって…!」

「スジバナ?!」

その子は、そこに集まっていたシーサーより頭二つ分小さい。ふわふわとした髪の毛はまだ頼りなく、月の光の中ではよりいっそう儚げに見えた。

「ヤッチーの仇をとりたいの!」

カジマヤは、深々とため息をついた。大人(すなわち、ウミカジ)に計画がばれたわけではないということへの安心感からと、この子供に口を滑らした奴が確実に一人はこの中にいるということに。


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