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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-11

「飃兄ちゃんは…十四の時にはもう、中国で―」

「お前は飃ではない!!」

久しぶりに聞いた、兄の怒声だった。身体がびくっとこわばるのを、カジマヤは抑えることが出来なかった。

「いくらお前が飃に憧れていようが、それくらいは解るだろう、カジマヤ!」

カジマヤは、自分の眼球の裏側から涙が湧き出てこようとしているのを感じて、体中にぐっと力をこめた。兄は、そんな彼の姿を見て、少し調子を和らげる。柔らかいため息をつき、立てた片膝に肘を休めて海を見る。そして、その上に輝く沢山の星を。

「こんなに子供が多い狗族が…なぜ減っているか、解るか?」

カジマヤは、その場に棒のように突っ立ったまま首を振る。

「お前や飃のような子供が…真っ先に敵に向かってつっこんで…死んでいくからだ」

カジマヤははっと目を上げて、ウミカジが見ているものと同じものを、不意に見る。星屑の中に兄は、消えて言った幾つもの命を見ているのだ。

「飃は…強い。その強さが例え憎しみによって育まれたものであっても、やつはその憎悪に屈してしまわないだけの強さがあったのだ…だがお前はどうだ?カジマヤ、お前は…奴のように戦えるか?」

カジマヤは、飃がふとしたときに見せる憎しみのどす黒い炎の宿った眼差しを思った。殺気だけで、自分と神立を動けなくさせたあの時の目を。彼はゆっくりと、力なく首を振った。

「でも、ヤッチー…俺は悔しいよ…悔しいんだよう…」

カジマヤは地面にしゃがんだ。膝を抱えるその姿は、兄の言葉を裏付けるように幼かった。

「あいつら…どんどん奪っていくじゃないか…空も…海も…木も…仲間もさあ!」

「カジマヤ…お前は心の優しい男だから、死んだウティブチのために何かしたいと思うことはわかっていたよ。あの戦闘機の残骸や、あの島に何度も足を運んでいたのも知っていたしな」

兄は、弟の頭に手を添えて抱きしめた。その優しさが堰を壊し、カジマヤはとうとう声を上げて泣いた。

「でもな…“それ”を解決するのは我々であってはならないんだ、ウットゥよ…。我々は、人間達が行うことの手助けをするしかないのだ」

少しずつ収まってきた嗚咽の合間に、ウミカジは言った。

「きっと、何年もかかるだろうな…」

しゃくりあげながら答える。

「ああ。見届けるためにも、おれたちは生きてなきゃいけないんだ。わかるな?」

「うん…」
星を瞬かせた風が、波の頭を白く乱して吹きすぎていった。その夜は、カジマヤが覚えている限りずっと、兄の腕の中ですごした。


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