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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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Stargazers-10

「だめだ」

「でも…!」

一番言いたくなかった言葉だが、カジマヤは仕方なく口にした。

「だめだ!お前はまだ子供なんだから」

スジバナは“子供らしく”頬を膨らませた。

「でも、ヤッチーは…!」

「ウリジンベの仇は俺たちがとる。お前が行っても足手まといになるだけだ、帰れ!」

少々手厳しいとも思える口調で、カジマヤは彼女を追い返そうとした。手本にしたのが彼自身の兄であるということは誰の目にも明白だったのだが。彼はその場にしゃがんで、泣き出しそうな少女と目線の高さを合わせた。

「お前まで、奴らに殺されちゃいたくないんだよ…俺たちがウリジンベに怒られちまうだろ?わかってくれ、スジバナ」

「ほう、ならお前は殺されても構わないというわけか?」

その声は、うっすら口を開いたスジバナの声などではもちろん無かった。その場にいた全員が、ハブに睨まれたカエルのように固まった。背が高いというだけでも十分威圧的なウミカジが、“さあ、どう叱りつけてやろうか”という気迫に満ちた瞳で、その場にいた全員の目を(どうやってそう言う印象を与えることが出来るのかについて知るには、彼らはまだ経験が不足していた)一度に睨みつけていた。

「ウ…ウミカジ…」

「やっぱり何か企んでいると思ったよ…何をする気かは聞くまでも無いな」

首謀者は、言うまでも無く円の中央にいたカジマヤだった。その場にいた全員が、今度はカジマヤに心配そうな視線を寄越してくる。一方カジマヤは、兄の視線を体中で受け止めていた。

「お前が始めたんだな」

「ああ!」

反抗的に言い返したカジマヤの頬を、鋭い平手が打ち据えた。あたりの静寂は、いまや静寂自体に音があるかのように思えるほど濃密だった。

「お前達は帰れ」

大人顔負けの気迫で並んでいた縮小版の猛者(もさ)達は、ウミカジの一言にゆっくりと従い、村への道を言葉も無く引き返していった。カジマヤは俯いて、何かを堪えるように肩をいからせている。

「…なんでだよ…。」

「自分でわからないか?」

ウミカジはそういい、カジマヤの横を歩きき過ぎて、海に面した崖に腰を下ろした。

「お前は…いろんな意味において…まだ子供なんだ」

「馬鹿にすんなよ!」

自分に背を向けている兄を振り返って、カジマヤが怒鳴る。

「俺、もう今年で十五だぞ!」

「“数え年で”だろう…まだ十四の子供に何が出来る?」

カジマヤはぐっと言葉につまって、はき捨てるように言った。


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