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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第23章-14

「深山さん、こっちに来ると危ない…!」

「君は私をなんだと思っているのかね?非力な一般人か?」

な、何で私が叱られなくちゃいけないのよ…。深山氏は相変わらず憤然とした面持ちで私に向かってくる。

「気が変わったんですか…?」

深山氏は、私の隣に立って澱みを見た。見上げるでも、睨みつけるでも、見据えるでもなく。

「腐ったまま死ぬより、生きてるならあがいて見せろと…君の友人が言うものでね。」

「茜が…?」

そして私は、初めて彼の微笑を見た。いや、深山覚義の微笑ではない…妖怪、覚(さとり)の、決意に満ちた横顔に、自然と微笑が浮かんでいただけのことだった。

「私の手をとって、何が起きても目を閉じていろ。私に送り込むんだ。」

「な、何を!?」

最初の二つは言われるがままに実行していた。最後の一つについては…私が送り込めるものって何?元気とか?私の元気を分けて、それで元気の弾でも撃つんだろうか。

「元気などではない…幸福な記憶だ。それを思い出せ。」

「援護するぞ、風炎!」

再び、澱みのごぼっという音。飃と風炎が、私たちの前に立って、ミサイルから守ってくれる。雨垂が振るわれるたびに聞こえる、歌うような風を切る音がする。ミサイルの気配、頬をかすめる風…

私は目を開けなかった。言われたとおりに、幸せな記憶を並べてゆく。私が笑顔で過ごした全ての瞬間を思い出す。

そして…飃のことを。

「可(よ)し!」

ビリりという痺れが、握っていた手に走って、私は目を開けた。私の手を握っていないほうの、深山氏の手が澱みに向かって伸びていて…私が目を開けた瞬間に、そこから眩しい光の線が走ったのを見た。尾を引くほど強い光を持った蛍が、迷いもなく澱みに向かって飛んでいくのを見ているようだった。全ての蛍が同時に澱みに届き、一瞬その場にあった何よりも眩しく輝いた。私は思わず目を覆った。

しゅうしゅうという音は聞こえていたけど、澱みがどうなっているのかはわからなかった。私は強い光線から目を庇って、とりあえず近くにいた深山氏の横顔を見る。彼もまた、このまばゆさに魅了されているように、目をしばたいていた。

「ああ…」

彼が言った。

「ああ…足掻くのも、悪くないのかもしれないな…」


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