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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-26

彼女は床の上で目覚めた。眠りに落ちる前には、ちゃんとカーペットの上にいたはずだったのだが…彼女はぼんやりと体を起こし、フローリングに張り付いていた頬を擦った。多分、今鏡を見れば、木目と奇妙な溝が顔に写っているだろう。朝焼けが街を金色に染め、朝を謳歌するように鳥達がさえずっていた。中谷は薄いブランケットを身体に巻き付けて、とりあえず台所でコーヒーを入れた。そして、飆が居ないことに気づいた。居ないということは、起きていると言うことだろう。自分の部屋に篭っているのかもしれない。中谷は、とりあえず自分の分のコーヒーを注ぐと、服を着てゆっくりと自分の目を覚ます作業に専念した。

30分後、まだ姿が見えないので、中谷は少し不安になってきた。

「飆―?」

風呂にも居ない。トイレも無人だ。もし、彼の部屋に居ないとしたら、外に出ている可能性がある。一人で何かを探しに出かけたのか、それとも…。

中谷は冷静に立ち上がり、飆の部屋の前まで行った。

「飆、起きてる?そこに居るの?」

―返事はなし。

めぐりも家を空けている。中谷は、もし飆が窮地に居るのならと、はやりそうになる気持ちを押さえつつ、この部屋に入るなといわれた理由を深く考えずにドアを開けた。

「何、これ……」

そこには祭壇があった。



―子羊を作った彼が汝をもつくったのか。



壁一面に、狂ったように書きなぐってあった。木炭で書かれたような、読み取るには危うい筆跡で書かれた詩の群れが、白い壁から天井までを埋め尽くしていた。

窓は内側から目張りされ、光りが入らないようにしてあった。

そして、幾つもの鉢には、花もつけないような奇妙な草が植えられていた。光の届かないこの部屋で。



―夜のあとを私は追いかけ、夜とともにいく。

私は東に背を向ける、

そちらから慰めが増してきたから。

光が私の頭脳を、

狂ったような苦痛で捕らえるからだ―



中には動物の入った檻もあり、小さな鼠や兎が、闖入者のことを胡散臭げに見つめていた。本棚に入れる気がないのか、そもそも本棚が無いのか、ものすごい数の、古くて分厚い本がそこら中に転がっていた。中にはページが開いたままの本もあり、書きなぐった文字も見られた。


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