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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-24

「あんたのこと、凄いと思うよ。ほんとに。変身できるし、魔法だってほんとに使えるんでしょ…見たことないけど。でもね、見てると可哀想になってくる」

問い返す言葉の見つからない彼を、くすっと笑って、中谷は言った。

「抱きしめて欲しい?」

「いいよ、ガキじゃあるまいし」

しかし、彼女は立ち上がっていた。すこしふらつく足で飆に歩み寄り、品定めするみたいに首をかしげる。

「完全に大人になるなんて、出来ないのよ。思い出を捨てられないあんたなら、なおさらね」

そして、するりと腕がまわった。背の高い肩を無理やり押し下げて、膝立ちにさせる。

「あんたは偉いよ。ただ、他人に助けてもらう方法を知らないだけ」

「俺に助けが必要だなんて知らなかったよ」

皮肉で返したつもりだったが、中谷には聞こえていないようだった。飆は、意地を張るのをやめて、自分の腕を彼女に回した。温かく、心地よくて、そして生きていた。ゆっくりとした鼓動と、体の熱。そして、紛れもない彼女の匂い。

「ありがとう」

「あんたに礼を言われたのも始めて」

彼女は言った。

「総じて、あんたはコミュニケーションが下手なのね」

「不器用なんだ」

彼女は少し腕に力をこめた。

「納得」

どちらともなく、湯につかる時のような心地よさにため息をついた。そのため息がハモって、ふと、酔いがさめる。腕に力がこもって、急に気恥ずかしさがこみ上げてきた。身体を離すタイミングをつかみきれず、回された腕だけがするすると引っ込んだ。

「えーと…」

中谷が、首に手をやってぼりぼり掻いた。気まずい時の癖だ。目を合わせるのが、急にものすごく難しくなる。目を合わせたら、次に何がくるか、大体予想がつくだけに、なおさら。飆が立ち上がったので、中谷はふらりと身体をそむけた。

「中谷」

呼ばれて、思わず顔を上げる。改めてみると、とても不思議な造形だと、彼女は思った。銀の曇りガラスの奥に燃える金色の灯火。長くはないけれど、豊かな睫。すっと通った鼻筋と、少しこけた頬。そして、そして…

唇は、柔らかかった。

しかし何かが二人を押しとどめて…大人なのに?いや、大人だから…でもパートナーなのに?それとも、パートナーだから…それ以上、一気にのめり込んでしまうことはなかった。今度はさっと身を引いて、お互いが、同じ質問と、同じ答えを目で問いかける。

―どうしよう?

―どうしようったって…

身体が…熱い。

中谷が飆の手をとり、そっと、身を寄せた。


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