光の風 〈回想篇〉前編-11
「カルサ、結界石は壊れたんだろう?」
カルサは視線を向ける事で応えた。
「状況を見れば分かるよ。それに、外でこれを拾った。」
貴未はズボンの右ポケットから取り出した物をカルサに渡した。カルサの手の中に転がる小さな石の欠片達。それは白く鮮やかな光を放つ結界石だった。
「結界石が砕ける時は大元が砕けた時。だったよな、カルサ?」
「ああ。結界石の部屋ごと爆破されていた。」
「爆破!?」
いきなり知らされた事実に、貴未の声は思わず大きくなった。
「現場に行ったのは、すべてが終わった後だ。何故そうなったのかは分かっていない。」
ため息混じりの声。確かにあの時、カルサは爆発音に気付いていた。すぐに動かなかった自分を悔やんで仕方がない。
「聖はこうなる事を予測していた?まさかな。」
小さな声で貴未は自分に問いかける。それに反応を示したのは千羅だった。
「自分の力だけで、あの襲撃に耐えぬき今尚残る結界を作れるなんて…並大抵の力じゃない。」
全ての視線が千羅に集まる。少し考えればわかる事実、しかし頭がそこまで働かなかった。
「本当は何者でしょう?」
カルサに投げかけられた疑問、黙り込み考えることでカルサは受けとめた。考えても答えは全て聖の心の中にある。
「結界石は紅奈が守っていた。その紅奈を聖が抱えて現れ、そして消えた。」
貴未の呟きは重く聞こえる。
「聖は結界石の爆破について何か知っている。」
貴未は1つの可能性を導きだした。それは皆の考えと同じ。
「とにかく早く情報交換を終わらせよう。オレは聖を捜しに行く。」
カルサが頷いた。
「貴未は以上でいいか?では、次はオレの番だな。」
貴未の頷きを確認してカルサは話を進めた。次は自分の番、カルサは千羅とアイコンタクトを取り口を開いた。
「オレと千羅はヴィアルアイに会った。」
一瞬にして緊張感が高まる。マチェリラは思わず立ち上がりそうになる。前のめりになる体はカルサの方を目指していた。まっすぐに向けられた視線、カルサは目で訴えるマチェリラに頷いてみせる。
「大丈夫、マチェリラの事は気付かれていない。」
マチェリラの体は小さく震えていた。それに気付いた貴未は支えるように彼女の肩を抱いた。それでも震えは止まらない。