初恋のハジメ方 act.4-1
Act.4
あれからというもの2人は時間を見つけては勉強会を続けた。柚子の教えによって優人の学力もどんどん上がってきた。
そのかいあって彼のテストも無事終わり、今日はテストも結果が出たという連絡がきたので結果報告を聞きに、いつも勉強会で集まっていたお店で待ち合わせた。
もっとも、もう彼の部活もいつも通りに戻ったため時間はいつも集まっていた時間よりも遅くなっているが。
「ごめん!遅くなって! 待った?」
部活後はお決まりになった着崩した制服姿にお決まりのセリフで彼はやって来た。
「ううん。 全然待ってないよ。」
これまたお決まりになった返事を柚子は言った。すっかりお決まりになるほど繰り返してきたこの勉強会ももうないのだと思うと柚子は少々さみしく思えた。
そう思う気持ちもあるものの、やはりまずは優人のテストの結果が気になった。この数週間付きっ切りで勉強をみたのだから当たり前といっては当たり前なのだが……。
「それで?? 結果はどうだったの??」
早速、興味津々といった感じで向かいに座った彼のほうに乗り出すようにして柚子は尋ねた。
そんな柚子に対して、優人はまぁまぁと少々もったいぶった感じで、
「今見せるからまぁ待ってよ。」
そう言いながらカバンから一枚の紙を取り出した。
「ナント!!奇跡の174/387位だったよ! ホント柚子のおかげだよ!ありがとう!」
じゃ〜ん、と効果音でも付きそうな感じで持っていた紙を開いてみせる彼。確かにその紙を見てみると彼が言った通りの成績が記載されていた。
それを見て柚子は驚いてしまう。テスト勉強にまじめに取り組んでいたため赤点は逃れているだろうと予想していたとはいえ、まさか上位半分に食い込むほどの好成績とは夢にも思っていなかった。
「すごいじゃない! 頑張った甲斐あったね!」
「100番台の成績とか人生で初めて取ったよ。」
まるで自分のことのように柚子は喜んだ。
そんな柚子に彼も嬉しそうに微笑み、今度は制服のポケットからさっきとは違う紙切れを取り出した。
「それでね。話変わるけど、実は柚子に勉強みてもらったお礼ってわけじゃないんだけど、渡したいモノがあるんだ。」
そういって彼が渡してくれたものを見ると≪初見祭≫と書かれたチケットだった。
渡されたチケットを手にしたままポカンとしていると、
「これ今度行われるウチの学校の文化祭のチケットね。 ウチの文化祭って完全招待制だから結構レアなんだよ。」
と説明を入れる彼に、実家が東京ではない柚子にとっては初めて知る情報で、へぇっといった感じでもらったチケットをしげしげと眺めていた。
「それでね。 その文化祭でウチの部が招待試合をするんだけど、よかったら見に来ない?」
「え!?」
テーブルの上で重ねた手にあごを乗せ、ニッコリと笑いかける彼に柚子は戸惑ってしまう。
「ホントに見に行っていいの?」
「ダメなら誘わないよ。 見に来て欲しいんだ。」
といつものニッコリ笑顔で止めを刺されてしまうと柚子にはもう断れない。戸惑いながらも了承してしまった。彼の笑顔には何故か断れないというオーラが常にあった。
「そのチケット2枚あげるから誰か友達誘っておいでよ。」