初恋のハジメ方 act.4-3
―――――
「ってあんたを助けてくれた例の王子様があの天野 優人!?」
柚子が一通り話し終わると梓は驚いた表情でダンッと立ち上がった。彼女の声もあいまってカフェにいた人達の注目が集まった。
「ちょ、ちょっと梓ちゃん声大きいよ!」
柚子は周りの目を気にし、梓をいさめるも、
「それどころじゃないわよ!! 何で今まで黙ってたのよ!!」
とさらに強く返されてしまった。梓の勢いに押されながらも柚子は、
「べっ、別に黙ってわけじゃなくてね、言うタイミングがなかったと言うかなんというか……。」
と、ごにょごにょと釈明するもさらに、
「そんなの黙ってたのと同じよ!……さてはあんた、天野 優人に惚れてるわね??だから黙ってたのね??」
と釈然としない表情で返されたと思ったら今度は一転、ニヤリと裏のありそうな表情で向かいに座る柚子に身を乗り出してきた。
やはりというか予想通りの展開に心の中で柚子は苦笑してしまう。
「私たちはそんな関係じゃないって。」
「アタシは〈アンタ達〉じゃなくて柚子、〈アンタ〉の気持ちが知りたいんだけど?」
さらにニヤニヤとした表情で追求をして来る梓に困ってしまう。いつもなら押しの強い彼女に負けてしまう柚子だが今日は違った。彼女の追及を阻止する切り札があるのだ。
「ホントにそんなのじゃないの!優人君とはホントにいいお友達なの!! もぉ〜そういう意地悪ばっかり言う梓ちゃんにはこれあげないもん!せっかく梓ちゃん誘おうと思ってたのに!!」
そういって子供のように頬を膨らませてそっぽを向いた柚子は、カバンから例のチケットを取り出した。
「はぁ?なによ、それ??」
それを見せられた梓は当然意味がわからずポカンとして聞いてきた。
「優人君の学校の文化祭のチケット。」
怒っているようにそっけなく答えた柚子に、今度は梓の態度が一変する。
「うっそ!? 天野 優人の学校ってあの初見学園でしょ!?どうやって手に入れたのよ??それって学園関係者にツテがないと入手困難なレアモノなのよ!」
驚いた表情で一気に捲し立てる梓に、逆に柚子も驚いてしまった。
確かに彼もレア物だとは言っていたがそこまですごい代物だとは知らなかった。
「優人君にもらったの。 でも梓ちゃんと行くのは辞めて他の人探すから。」
しかし、すぐに気持ちを切り替えると、そう言い放ってじゃあねっと席を立とうとする柚子を梓の腕が阻止した。