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ルウとリル
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ルウとリル-1

「都会の空はさー」

隣に座っているルウが呟く。
少し高いビルの屋上の塀の上。
眼下にはビーズを零したような光が溢れている。
返事をせずにルウの方を向くと彼は咥えていた煙草を口から離して煙を吐き出した。

「灰色だよな」

空を見上げ、また呟く。
一緒に見上げると確かにそこにはダークグレイの空が広がっていた。
星一つ見えない空。
月でさえ輝きが鈍っている。

「田舎の方の空はもっと……」

考え込むルウ。
黙ったまま彼の言葉の続きを待ち、同時に促す。

「こう、黒って言うか青を混ぜたっていうか」

彼の持った煙草はもう根元まで燃え尽きていて、彼はそれを地面に押し付けた。
そんな動作を見ながら少し考えて口を開く。

「紺色?」

彼の目がすこし大きく開いた。
縦に何度か頷く。

「そうそう。紺色。キレイだよ、星が細かくて果てしなくて」

空を再び仰ぎ見て目を瞑って笑顔を見せる。
きっと瞼の裏側、彼の脳裏にはその風景が浮かんでいるんだろう。
都会の空しか知らないわたしは彼のように目を閉じる事無くダークグレイの空を見ていた。

ルウの腕時計のアラームが鳴る。
今は少し時代遅れになったそのデジタル時計を彼は愛用しており、目を閉じたままアラームを止めた。
顔を空から下へと戻し、煙草を吸っていた手に手袋をはめた。もう片方はずっとはめたままだった。


「さぁ、行こうか」

夜だというのに胸元からわたしには少し大きいサングラスを取り出しさっと掛けると立ち上がる。
それはわたしも一緒、というか、わたし達二人はほぼ同じような格好をしている。
黒いフード付きのパーカーに黒いハーフパンツ、スニーカーも黒、手袋は革でそれも黒だ。
サングラスだけは薄い茶色。
ルウが舌なめずりをした。
わたしも立ち上がり眼下の景色をもう一度見た。

ここは有名なホテルの屋上。
正面玄関側。
ホテルの門から一台の黒塗りの高級車が入ってくる。埃一つついていないくらいのテカリ。
数分後には一人の男がホテルから出てくるだろう。

「カウントを」

手袋をぐっとはめなおしてわたしも舌なめずりをした。
ルウが頷き時計を見た。
デジタルの文字が浮かぶ。


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