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ルウとリル
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ルウとリル-2

「……3」


ビルぎりぎりの塀、あと数センチで落下する所で片足を引く。
この瞬間が一番好きだ。
胸の鼓動が早くなり、笑みが止まらなくなる。


「……2」


ルウがフードを被った。わたしも同じようにフードを被る。紐を軽く締めて脱げないようにする。
ポケットの中に入ってるリモコンをいじってやっと耳元に入ってる無線機のスイッチを入れた。
その瞬間にざわざわとした雑音が広がる。
無線の先にいる人物は何も言わない。


「……1」


ルウを見る。彼もわたしを見た。
二人で笑みを交わし、お互いに近い方の手の親指を立てた。
二人だけの儀式。
今回も上手く行きますように。
今回も二人で帰れますように。
今回も生きて戻れますように。


「……ゼロ!」


ルウの掛け声で塀を蹴り飛ばす。
ふわりと一瞬だけ体が浮いた。
その後は物凄い風圧と共に体が地面に吸い寄せられる。
少し風向きが今日は不利かもしれない。
それでももう、動き始めてしまったら、誰にも止められない。
無線機からも今は何も音が聞こえてこない。
涙が出そうになるのを目を細めて耐える。
もうすぐ地面だ。
体勢を懸命に立て直す。

目標の高級車の右側、高級車は右を前にしているので、わたしは必然的に車の前に降り立つ事になる。
爪先から地面に降り立つ。
なるべく音を立てないようにしても、やはり重力があるからか、すこし大きめな音が立つ。
その音に周囲の人間が気をとられている内に顔を上げ地面を思いっきり蹴り上げて走る。

目前には丁度ホテルから出てきたターゲットの男。
初老で禿げ上がり、人目で高そうなスーツを着ているとわかる。
身体も少し太めで顔は赤くなっている。
中で行われていたパーティでたらふく食べてたらふく呑んだのだろう。
周囲を固める彼の警護者は4人。
まさか空から降ってくるとは思って居なかったのか同様している。

もう一度走りながら舌なめずりをして右手を背中に回す。
そこには少し小ぶりの半月型をしたナイフが裸のままベルトに挿してある。
それを右手で引き抜くとまずターゲットの右側にいる警護者の首を半回転しながら斬り付けた。

「う、う、う、うわぁぁぁぁぁっっっっ!!」

それがターゲットの悲鳴か警護者か背中越しでわからない。
けれど、頬に温い液体が吹き付けてくるのは確認できた。
そのまましゃがみ今斬り付けた警護者の背後に立っている警護者の足にナイフをまわす。
わたしのナイフが警護者の足を捕らえると同時に背後でどさりと人が倒れる音が2回した。


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