君に捧げるアイシテル-6
「俺は、海のこと好きだよ。大好き。『声』抜きにしても海のいいところ知ってるから」
涙が、止まった。
「ほん…とに…?」
恐る恐る声を出すと、先生は嬉しそうに言った。
「うん。笑顔も怒った顔も可愛いし、何だかんだ言っても俺のこと忘れずに呼びにきてくれるし、授業は真面目に受けてるし。それに、海、1回だけ教科書忘れただろ?アレも同じ時間に古典があること忘れてて、隣のクラスの子に貸しちゃってたって他の先生に聞いた」
声だけじゃない、俺は海のそういうまっすぐなところが好きになったんだ。
「先生…」
先生の顔を見ているうちに、また涙がこぼれてきた。
「ところで海、俺に言うことない?」
意地悪い笑みを見せる先生に、私は顔を真っ赤にする。
「夢の中の海は言ってくれたのに、こっちの海はナシかー」
「…分かった、言いますよ」
そして私は先生の耳元で囁く。
愛の言葉を。
もしかしたら『声』にこだわっていたのは、先生じゃなくて私だったのかもしれない。
いつの間にか私は『声』に嫉妬して、自分の価値を自分で下げていた。
でも、ちゃんと先生は見ていてくれた。『私』を見ていてくれた。
先生、ごめんなさい。
そして、アイシテル。
5限目終了のチャイムが鳴っても、私たちは屋上にいた。
「先生、授業は…」
「うん。いいや、具合悪いから自習って言ってくる」
「いや、私も授業行きたいんですけど…」
「ダメだって。俺がついでに次の教科の先生に言っといてあげるよ、海は胸が痛いそうなので休むって」
「別に痛くないです」
「だってさっき泣いてたじゃん、俺が好き過ぎて胸が痛くなったから」
「そういうワケじゃありません!!」
私は先生を睨みつける。
すると、先生はいやらしい笑みを浮かべた。