君に捧げるアイシテル-4
「私、もう先生呼びに行くのやめようかな…」
そう呟くと、京子はそっと私の頭を撫でた。
京子は私の気持ちも知っている、私の大切な親友だ。
「元気出しなよ。確かにライバルは強敵だけどさ」
「うん…」
もし、私の声と京子の声が正反対だったら。
きっと先生は、私のことはさっきの先輩たちのように『ただの生徒』として扱い、京子に『特別な存在だ』と囁くのだろう。
私はきっと、それだけの存在。
『声』以外では先生を振り向かせられない、みじめな存在。
「──先生?謙介先生?」
昼休みにこっそり資料室にやって来たが、返事がない。
奥に進んでみると、資料室の棚に寄りかかって眠っている先生がいた。
長い睫毛。
白いYシャツがよく似合う、細いけど筋肉のついた体。
大きな手に、チョークの粉がついた指。
眠っていても、あなたはこんなに私をときめかせるのに、私は『声』しかあなたに愛してもらえない。
何となく悔しくなって、泣きたくなって、私は先生のそばに近寄って腰をかがめた。
そして、彼の耳元へ口を近づけて囁いた。
アイシテル。
すると、先生は幸せそうな表情をして「俺も…」と呟いた。
私は何をやっているんだろう。