「競泳水着が消えた日。・・・まるみえ?日本選手権」-1
その日の朝、山田利光は、
いつもより、かなり早く目覚めた。
「まだ4時半か・・・。」
きょうは2009年1月11日(日)。
成人の日を明日に控えた、3連休の中日(なかび)である。
この日はある意味、日本競泳史上、
歴史的な日になるはずである。
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そのニュースは、
あらゆるメディアを通じ、
あっという間に世界中に伝えられた。
さかのぼること4ヶ月前、
北京オリンピックが終わって一段落した、
9月のある日のことである。
「国際水泳協会、LR(レイ○ーレーサー)禁止を決定。
・・・女子選手の水着着用、自由化へ。」
経緯は、以下のとおりである。
北京オリンピックとその国内予選で、
LRを着用した選手が、
次々と世界新記録を大幅に更新し、
オリンピック直後、改めて
「水着の性能で、記録が左右されていいのか?」
という議論が世界中で起きた。
これを重視した国際水泳協会が、
LR着用を禁止したのである。
しかし重要なのは、これではない。
LR禁止の代わりに、かねてから欧米選手から要望されていた、
水着着用を自由化したのである。
素っ裸で泳いだ方が、水着の布による抵抗が無くなり、
100mあたり約1〜1.5秒速くなることが、
以前から言われていた。
欧米選手は、速く泳ぐことができるなら、
裸になる恥ずかしさなどは、二の次なのである。
「裸OK」の新ルールは、
LR禁止により記録が後退しないようにする、代替案なのだ。
但し、誰もが素っ裸で競技をしたのでは、
公序良俗に反する。
そこで国際水協が打ち出した「裸OK」適用者とルールは、
(1)その外見上の見地から、女子選手のみとする。
(2)年齢は、18歳以上とする。
(3)乳輪、乳頭(乳首)、および性器、陰毛は
推進力、浮力を高めない素材の布で隠し、
露出してはならない。
であった。
実は、「記録が後退しないようにする」というのは建前で、
「裸OK」には、国際水協の策略が隠されていた。
LRを国際水協が認めたのは、
LR開発会社が、国際水協のスポンサーであったことを
無視できない。
当然、LRの禁止は、スポンサーから金が入らなくなるし、
他の水着メーカーの反発が予想できる。
「裸OK」は、国際水協にとって痛手になるのは必至である。