「競泳水着が消えた日。・・・まるみえ?日本選手権」-4
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会場には、集合時間の30分前に到着した。
競技運営スタッフ受付では、
まず荷物検査が行われた。
「新ルール」の性質上、スタッフと言えども
カメラの持込を禁止し、画像流出を阻止するためだ。
当然この措置は、コーチや選手たちにも
適用されており、カメラのほか
双眼鏡などの類も禁止となっている。
「申告物件はありますか?」
「この携帯電話だけです。」
カメラ付き携帯も持ち込み禁止であることは、
事前に通知されている。
係員により、バッグの中から服のポケットにいたるまで
入念にチェックされた後、
IDカードやスタッフ用ユニフォームが渡された。
「スタッフの事前ミーティングは、
8時20分から第1会議室で行われます。」
山田は、胸ポケットにさした、太目のペンを触りながら、
更衣室に向かった。
着替えて時計を見ると、まだ8時前だった。
山田はプールサイドに降りてみることにした。
7時30分からメインプールが解放されており、
選手たちがウォームアップをしているはずである。
女子選手たちの姿を想像しながら、
プールサイドに出る。
しかしそこには、いつもの大会と変わりなく、
競泳水着を着て泳ぐ、選手たちの姿があった。
いつもと違う点があるとすれば、
妙に静かなことぐらいだろう。
考えてみれば、当然のことである。
当初、「新ルール」での大会開催は、
女子選手のみで行うことも検討されたが、
どの道、国際大会となれば、男子選手も出場するのである。
通常どおりのプログラムで進行しないと、
問題点などをチェックする「試行」になりえない。
間近に男子選手がいるのに、
裸になる女性はいないだろう。
と・・・。
後ろの方から、女子選手たちの
ひそひそ話が聞こえてきた。
聞き耳を立てると、
「ねえ。なんだかムズムズしない?」
「うん。あそこが、なんだか痛がゆい・・・。」
「ボトムパッチが、うまく貼れてないのかしら?」
パッチとは、「新ルール」において
胸や下腹部を隠す布のことである。