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嘆息の時
【その他 官能小説】

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「続・嘆息の時」-16

ハッと我に返り、何気にエリアマネージャーの業務表にパラパラと眼を通す。しかし、頭の中では沢木の事が気になっていた。

(沢木と滝川くん……間違いなく付き合ってたよな……もしかして、もう別れちゃったのか?)

まさか沢木本人から事情を聞くわけにもいかない。
頭を抱えて悩んでみたが、さっきの涼子から来たメールを思い出してフッと薄く笑った。
なんだか先の事をあれこれと考えるのが馬鹿らしくなった。
好きな相手と結ばれる結ばれないは、まさにタイミングと勇気であり、また、気持ちのやりとりを如何にたくさん出来るかだろうと、今回の事を振り返りながら柳原は思った。
もちろんそれは相手にも少しは自分への気がなければ無理な話で、そこを誤るととんでもない勘違いに苦しんでしまうだろう。
柳原は、自分の気持ちを改めて再確認し、その上で愛璃の気持ちを大事に優先させていこうと考えた。それが、悔いの残らない恋愛に繋がるかもしれないと信じたからだ。

涼子からのメールを開き、返信ボタンを押す柳原。

『ご丁寧なお言葉をありがとうございます。このあいだの事は気にされないでください。やはり子供には父親が必要だと、僕も強くそう思っております。それは、けっして再婚相手の父親では埋められぬものがあり、有理ちゃんにとっては本当の父親、すなわち別れた旦那様が一番なんだと。篠塚さんの決意には並々ならぬ葛藤があったと思います。しかし、これで良かったんだと思います。僕も、篠塚さんと一緒に過ごせた時間がとても楽しかったです。また、ドキドキとした胸の高鳴りが、忘れかけていた純粋な気持ちを教えてくれました。僕のほうこそありがとうございました。少しでも篠塚さんと有理ちゃんのお役に立てたのなら、それが僕の幸せであり、喜びであります。今度は親子三人で来店してください。とびっきりの笑顔で迎えさせてもらいます』

メールを打ち終え、なんとも良い子ぶった臭い文章だな……そう思ったが、ニコッと笑みながら送信ボタンを押した。

柳原は、実に穏やかな顔を浮かべていた。
無意識に煙草へと手が伸び、口に咥えてから火をつけた瞬間、ここが禁煙であることに気付いて慌てて消した。

「さあて、明日もジェロを歌うかな〜!」

背を伸ばしながら呟く柳原。
その日の夜に、沢木本人の口から『以前付き合っていた彼女と正式に婚約しました』との報告があり、俄然明日のデートに気合が入ったのは言うまでもない。
運良く振り出しに戻ってきた愛璃との関係に、柳原はひとり新たな恋の予感に浮かれていった。


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