保健室のヒマワリ-7
気が付けば誰も居ない教室に、俺はポツンと一人で居た。
あれからどうやって終業式が終わり、自分がいつ教室で通信簿を貰ったかさえ分からない。
終業式だからか、校庭で部活動に励む生徒さえ居なかった。
机に無造作に置かれた携帯には、園田から
『駅前のカラオケ屋にいるから気が向いたら来いよ』
とメールが来ていた。
セミの鳴き声だけが、うるさい程耳につく。
とりあえず先生に会いに保健室へと向かう。
“ガラガラ…ッ”
『あら、高木君……』
ノックも無く開けた保健室には、困った顔の先生。相変わらず消毒液の臭いと先生の甘い香りが広がっていた。
『はじめましてッ』
先生だけだと思っていた保健室に、自分の母親位の年の女性が立って居た。
『あ…、ど…うも』
『高木君、後任の金森先生よ。金森先生、高木君はサッカー部で保健室の常連さんなの』
戸惑う俺に構わずに、先生は笑って金森先生に俺を紹介した。
“後任”
先生が学校を去る事が現実なんだと容赦無く突き付けられる。
頭に血が昇って行くのが分かる。
『高木君これからよろしくね。じゃあ花田先生、あたしは職員室に行ってきますから』
そう言って金森先生は保健室を去って言った。
『こんな時間まで残ってたの?』
何も無かったように先生が話かけて来た。
『きゃ…ッ』
“ドンッ”
『俺の気持ち知ってるくせに…っ!!!』
気付いた時には俺は先生の両手を抑え、を壁に押し付けていた。
『高木君、離して。痛いわ…』
先生は俯いてつぶやいた。
『………嫌だ』
情けない事に感情が高まり、涙が出そうになるのを必死に堪える。
『俺、本気で好きなんだよ。』
『何度も言ったでしょ?あなたは生徒で、あたしは教師なの。応えるわけにはいかないわ』
『はぐらかさないで、俺を見てよ』
俯いて首を振る先生。