保健室のヒマワリ-5
「ねぇ先生。どっか遊びに行こうよ」
「あら?こんなオバさんを誘ってくれるの?嬉しいわね〜」
「先生は全然オバさんなんかじゃないよ」
「何言ってるのよ。高木君より10歳も年上よ?立派なオバさんだわ」
先生はアハハッと笑って言った。
「はぐらかさないでよ。俺、本気なのに…」
先生はいつも俺を相手にしてくれない。
いつも冗談で済まそうとする。
「なら、尚更ダメだわ」
先生は困ったように笑う。
「何で?俺、先生好きなのに」
先生は麦茶を一口含み、コップをゆっくり机に置いた。
『ありがとう。でもあたしは先生で、高木君は大切な生徒よ。それ以上にはなれないわ』
“ピピ………ッ”
先生の言葉と同時に、俺の携帯が鳴った。
「ほら、友達からでしょ?テスト最終日なんだから、早く遊びに行ってらっしゃいよ」
先生が手を振りながら言った。
携帯を開けると、先生の言うとおり『先に行ってて』と言った俺が余りにも遅いため、友達からの催促のメールだった。
このタイミングで・・・・。
なんて間の悪いメールだろう。
「行ってきなさいよ」
携帯を開いたまま、返事をどうしようかと思って居た俺に、先生が優しく微笑んだ。
「・・・・わかったよ」
しぶしぶ立ち上がる。本当ならば、ずっとここに居たい気持ちだったけど、友達も邪険には出来ない。
「先生!!俺、本気だし、夏休みも毎日来るからな」
釈然としない気持ちを抱えたまま、そう言い残して保健室を後にした。
先生は困った顔で笑って手を振っていた。
困らせたいわけじゃない。
伝わらない想いに、少しだけ胸が熱くなった。