保健室のヒマワリ-10
『バイバイ、先生。
大好きだったよ』
もう届かない。
二度と届かない。
もう会えない。
二度と会えない。
先生に伝える代わりに、ヒマワリに向かって囁いた。
−−−−そして、始業式
夏休み中部活には出ていたが、避けるように保健室には行かなかった。
“先生が居ない”
という現実を知るのが怖いだけだったのかもしれない。
終業式よりはマシになったけど体育館は相変わらず蒸し暑い。
俺の額から、汗が流れ落ちた。
無意識の内に目で先生を探したけど、見当たらない。
当たり前の事なのに……、俺はがっくりと肩を落とした。
HRも終わり、友人達に 先には帰るよう伝え、俺はある所へと向かう。
−−そう“保健室”に。
“ガラガラ……”
『あら、いらっしゃい』
出迎えてくれたのは金森先生だった。
部屋には花田先生の甘い香りも、姿も無い。
部屋いっぱいに消毒液の臭いが広がっている。
『見た感じ怪我じゃなさそうだけど、どうしたの?もう他の生徒は帰ったんじゃ無いの?』
金森先生が優しく笑いかけてくれた。
『少し…、頭が痛くて。30分くらい休ませて貰えますか?』
『構わないけど、先生職員室に用事があるのよ。一人で大丈夫かしら?』
『大丈夫です』
むしろ一人の方が良い。
じゃあ何かあったら内線で呼んでね。
と言い残して先生は保健室を後にした。
保健室の中を一周りして、花田先生の香りを探した。当然ながら、どこも香りはしない。
先生は居ないんだ。と言う事を改めて思い知る。