愚かに捧げる2-2
(何!?)
血の流れの感じられない、無機質な、それ。先端だけ細くなっているそれはゆっくりと真理子の中に進入を開始した。比較的細いものだが、真理子には十分すぎる質量に感じられた。
(こんなの、入らない・・・)
しかし他ならぬ真理子自身の愛液によって潤っていたそこはゆっくり、だが確実に進入してくる。ある程度入ったところで、入り口を広げていた指がまた敏感な突起を触る。
「ぁ・・・ぁぁ・・・」
耐え切れず、小さく呻く。膝ががくがくして立っていられない。ここは電車の中、敏樹の目の前だという思いが小さく、儚くなっていく。最後に思いっきり奥まで突き上げられ、真理子の体は飛び跳ねた。たまらず、敏樹の胸にしがみつく。
「ん・・・?どした?」
敏樹が目を開ける。痴漢の手は真理子の下ろした下着を元に戻していく。・・・中に無機物を押し込んだまま。
「ううん・・・なんでもない」
きちんと戻された下着の中に、何か紙きれを入れられる。それきり、痴漢の手は伸びてこなかった。
「顔、赤いよ。熱でもあるんじゃない?息も荒いし・・・」
「平気だよ。電車の中、暑いよね。クーラーついてるのに」
「この人の多さじゃね。仕方ないよ。少し熱にやられたのかな?」
「ん・・・そうかも」
「心配だな。学校まで送っていくよ」
「えっ・・・いいよ。平気平気!」
「平気じゃない。熱中症になったらどうするの。受験生でしょ」
本当は、駅に着いたらすぐトイレに駆け込んでこの中の異物を抜いてしまいたかった。
だが、ついに真理子は敏樹と登校することを承諾した。
「ありがとう・・・きゃっ」
まるで返事のようにいきなり中のものが振動しはじめた。
「マリ?どうした?」
あまりの衝撃に敏樹に返事ができない。恋人の胸にしがみつくことで精一杯だった。
「ちょっと、大丈夫?・・・次で降りよう」
ふるふると真理子は首を振るが敏樹は強引に真理子を電車の中から降ろした。
敏樹と真理子は駅のベンチに並んで座っていた。比較的人の多い駅で、9時近くても周りには電車を待つ人が点在していた。真理子は敏樹の買ってくれた冷たいジュースの缶を手に持ちながらも開けることができずに俯いて堪えていた。
「マリ?どこが苦しい?救急車呼ぼうか?」
「ううん、ほんとに平気なの。ごめんね心配かけて」
「いい加減にしなさい。平気に見えないから聞いてるんだよ。どこが苦しいの?」
「・・・胸」
まさか、本当のことは言えない。
「胸!?肺か・・・まさか心臓・・・」
やっぱり救急車、と言い出しかねない敏樹に向かって真理子は無理やり笑いかけた。
「ううん、外の空気吸ったら随分楽になったよ。ちょっとしたら治るから…」
「ほんとに?マリは頑張りすぎるんだよ。昨日も遅くまで勉強してたんでしょ」
「うん・・・だって、トシと同じ大学行きたいんだもん・・・」
「バカ。それで体壊してちゃ意味ないでしょ。落ち着くまで一緒にいるから」
「うん・・・」
その優しさが、今の真理子にとっては拷問だった。
しばらくすると振動はおさまったが、結局敏樹は本当に学校まで送ってくれたため、真理子が異物から開放されたのは学校のトイレの中だった。
下着を下ろすとパサッと紙が一枚落ちた。バイブにばかり集中して、紙を下着に入れられていたことをすっかり忘れていた。
紙を開いてみて、真理子は呆然とした。どこにでもあるメモ帳に、手書きで「明日もこのおもちゃを入れてきてね!もし命令に従わなかったら優しい彼氏にばらしちゃうよ!」
と書かれていた。いつまで続くのか分からない受難に、真理子はしばらく立ちすくんでいた。