多分、救いのない話。-6--6
「何を言ったんです? ねえ、何を、何かしたんですか!?」
「何も!!」
ガシャンと、大きな音に、反射で身が竦んだ。半拍遅れて、葉月が拳を自動販売機に叩きつけただのだと理解する。
「俺は、ただ――」
小さな、そして悲痛な拒否に、水瀬は飲み込まれる。だけど。
「……何を、言ったんですか?」
静かに、しかし鋭く、水瀬は問う。
水瀬は母娘を、知っている。
だから何もしてこなかった。
だから、何も出来なかった。
「…………」
叩きつけた拳を離し、深呼吸をし。
そして水瀬に向けられた眼には、激しい決意。
「神栖は救います。俺は、絶対に」
唇が噛み切られそうなほど噛みしめながら、それでも言葉を吐き出す。
まるで、その姿は。
「だから、言えません。――約束、したんです」
激情に飲み込まれた水瀬には、それ以上追及出来なかった。
「……捜しに行きます。また連絡しますから」
黙って独りで全てを背負う、その姿は。
あの時の彼女に、何処か似ていた。