多分、救いのない話。-6--4
「奈津美さんは」
ポツリ、と言葉を落とす彼女の真意は、やはりわからない。
「何処に行ったと思う?」
「…………」
肩に置いた手をどけ、視線を外し、考える。
「一般論なら、子供が家出する場合、親が見つけられる範囲に家出することが多いんだけど」
更に考え、唐突に思い出す。
「秘密基地はどうですか?」
教師としての自分と友人としての自分が曖昧になり、口調が敬語とタメ口を行ったり来たりしている。自分も混乱していた。
「秘密基地?」
「……お母さんには内緒にしてと言われていたんだけど、そういう場合でもないですから……」
今度は彼女が考える番だった。水瀬の時より深い沈黙。
「……いいえ、心当たりはないわ」
(………あれ?)
「え、でも……秘密基地の存在自体はお母さん知ってるって、メグちゃんは」
「ああ。さっきの部屋のこと?」
「さっきの部屋……」
「あの映画だらけの部屋」
「……なんだ」
よく考えたら知っていたらまず真っ先に捜すだろう。
(……………あれ?)
いや、違う、何かがおかしい。違和感がある。何か勘違いがある。
しかし、水瀬の混乱とはお構いなしに、彼女は更なる爆弾を落とした。
「まさかとは思うけど」
あは、と乾いた笑声は、壊れた狂気を隠そうともしていなかった。
「――駆け落ちだったりして」
……一体彼女は、何を言ってる?