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深夜の電話
【純愛 恋愛小説】

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深夜の電話-1

「もしもし?あたし…。
ねぇ、今からそっち行ってもいいかな…」
深夜2時、宏美から電話が来た。
30分前の事だ。



「で?今日はどうしたんですか?」
俺は宏美の前にビールを置きながら尋ねた。
「ちょっと…あたし酔わせてどーする気!?」

またコイツは訳のわからん事を…。
まぁ、宏美が電話してきてウチに来んのは、大体彼氏と何かあったからだ。

「…祐次ならどうする?もし祐次に彼女がいたとするでしょ?
で、その彼女、自分の知らない男と裏で付き合ってんの。
その事彼女に問いつめたら、じゃあ別れようよって言われて…祐次、どうする?」

ふーん、なるほど。つまり宏美も二股掛けられてたって事ね。

「俺だったら…とりあえず相手の男ぶん殴るかな。後は彼女の好きにさせる感じ?」
「…悔しくない?」
「え?そりゃあ…悔しいけど…誰が好きかなんて他人が決める事じゃないっしょ。
彼女が俺じゃない男選んだんなら、仕方ないけど潔くやめるよ」
「へぇ…かっこいいね」

そんな事ない。
ただ、その女の子が好きじゃないだけだ。
俺が好きなのは…。



「よぉ〜し、ほんならあたしもあの女殴るつもりで行くかなぁ!」
宏美は残っていたビールを一気にに飲み干して言った。
「勢い余って殺すなよ?」
「大丈夫大丈夫!それより今日ありがとね…てゆーかいつもだけど…。
ホント聞いてくれるだけでも嬉しいんだ。マジありがと!」
「どういたしまして」
頑張れよ、とか、負けんなよ、って言えない自分がこの上なく残酷に思えた。
宏美の彼氏は宏美が選ぶモンだ。
俺が水を差す事じゃない。
誰が好きか、なんて他人が決める事じゃない…。

そう自分に言い聞かせながら宏美を家まで送った。


昨日(今日の朝か。)、祐次の家に行った。
聞いてもらうだけでも…と思って、彼氏と何かあるとすぐ頼ってしまう。
しかも良い事言ってくれるからやめられないんだよな。



夜、あたしは彼氏の家にいた。
ちょこっとだけ彼が席を外した時、好奇心に負けて彼の携帯を見てしまった。
時制が足りなかった。

メールの受信トレイには、あたしよりも、見た事のない女の名前の方が多かった。
メールの内容を見てみたい気持ちを抑えて、あたしは携帯をあった場所に戻した。

昨日のあたしは、彼と楽しい話をしても、テレビでお笑い番組を見ていても、心から素直に笑えていなかったと思う。
そして耐えきれなくなり、深夜、遂に祐次に電話した。
「…もしもし?あたし…」

祐次に言ったら少しだけどスッキリした。
同時に気合いも入った。
ありがと、祐次。


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