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深夜の電話
【純愛 恋愛小説】

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深夜の電話-2

借りている合鍵で鍵を開け、あたしは今彼氏の部屋にいる。
彼はいなかった。
代わりに、マッパの女が目の前で眠っている。

あたしはとんでもない場面に出会したんじゃないだろうか。

閉め切ったカーテン、ベッドの上の裸の女、ゴミ箱の中…。
完璧だ。
完璧に疑いようのない事実だ。
女はあたしに気付く様子もなく、微かな寝息をたてて眠っていた。


1時間が経過した。
彼は帰ってこない。
女もぐっすりだ。
あたしはというと、心臓が早鐘のように鳴っていた。
そのおかげで手も頭も顔も熱い。
刻一刻と決戦のトキが迫っている。
最期の時間は近い。


昨日の今日でまた夜中、宏美から電話が来た。
今回の彼女は涙声だった。
もう祐次ん家の前まで来ちゃったって。
だったらインターホン押せよと思いつつ、玄関のドアを開ける。
「祐次ぃ〜…」
そこには雨でグショグショになった宏美が立っていた。
「…お前…傘ぐらい持っとけよ…」
「濡れたい気分なの…っ」
「気分って…とりあえず入れよ」

宏美を上げた後、タオルとビール2本を差し出し、話を聞いた。
途切れ途切れに語る彼女は、雨で濡れたのか泣いたのか、目の化粧の殆どが落ちていた。
話をまとめると、こうなる。


宏美は夕方彼氏の家に行き、知らない女の寝ている部屋で3時間待った。
3時間経ったところで、目の前の女が目を覚ました。
女は軽く悲鳴をあげ、とりあえず宏美はその女の顔をぶっ叩いたそうだ。
「痛いわね!何よアンタ!」
「そっちこそ何よ!」
丁度そこに彼氏が戻ってきたそうな。
なんてタイミングの悪い。
「宏美…」
「この女誰よ!?」
宏美は問いつめた。
「悪い…このヒトとは結婚前提に付き合ってんだ。
見つかっちまった以上…別れてくれないか」
「そぉゆう事よ〜。バイバ〜イ」
「バカ!バカバカバカ!いっぺん死ね!!ゴミ箱にこーゆーモン捨ててんじゃねーよタコ!あばよ!!」
そう叫んで彼氏の家を飛び出してきた。





「…祐次…ティッシュ…」
「あ?あぁ…ハイ」
「ありがと…」
思っきし鼻をかむ宏美。
俺はもう見ていられなくて、彼女を抱き締めた。
「ゆ…っ」
「黙っとけ」
雨で濡れて少し冷たい彼女の細っこい体を、俺は強く抱き締める。

誰が好きかなんて他人が決める事じゃない?
彼女が他の男選んだら?
知るか、そんなの。


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