陽だまりの詩 epilogue-6
それからは、美菜が菜の花畑で遊んでいるのを俺と奏はベンチに座って見ていたが、しばらくして美菜は疲れたのか戻ってきた。
「疲れたの?」
「うん、ママ、おうた歌おう!」
「いいよ、パパも歌ってね」
「ああ」
もちろんその歌は、陽だまりの詩。
以前、俺は奏に陽だまりの詩のことを訊ねてみた。
だが、奏は気付いたら知っていて、誰にも教わった記憶はないらしい。
お父さんもお母さんも知らないと言う。
俺はそれ以上、詮索しなかった。
きっと、この歌は奏の思い出であり、この歌が奏の支えになったのだろうから。
そこに足を踏み込むような野暮な真似はしない。
そして今、この歌は美菜へと受け継がれていた。
できれば美菜の後もずっと続いていけばいいと思う。
この歌を歌うだけで、こんなに暖かな力をもらえるのだから。
奏に出会えてよかった。
俺はこれからも、この暖かな陽だまりの中で生きていく。
「あー、パパ間違えた!」
「しょうがないだろ!ちょっと前に奏に教わったばかりなんだから」
「じゃあもう一回ね!」
「せーのっ」
お空はお母さん
お日様はお父さん
見上げればいつも家族がいる
悲しいとお母さんが励ましてくれる
嬉しいとお父さんが照らしてくれる
二人の下に私がいる
悲しいとお母さんが泣いてくれるから
嬉しいとお父さんが暖めてくれるから
私は強くなれる
今日は雨でも
明日はきっと
陽の光が私を包んでくれる
私は今
陽だまりの中にいる
END