陽だまりの詩 epilogue-3
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「また二人揃ってなにか悪巧みしてたんでしょー!」
この日のために用意した巨大なビニールシートの上に座ると、奏が頬を膨らませて俺に凄んでくる。
やっぱり凄んでくる顔はお父さんと瓜二つだな。
「…いやいや、タバコだよ」
「もー!そろそろタバコ止めてって言ったじゃん!」
「……」
数年前は、お父さんと同じ匂い、とか言って喜んでたくせに。
奏はもちろん今でも歩くことが出来ず、家では足を引きずって動くが、外では常に車椅子の生活が続いている。
それは一生変わらない事実だ。
だけど奏は頑張っている。
美菜が生まれてから、奏は本当に強くなった。
一人の人間として、母親として。
まあ多少、強くなり過ぎな感は否めないが。
「美菜が出てきたわよ」
お母さんが言うと、俺達は一斉にグラウンドを向いた。
「おー、張り切ってるな」
「美ー菜ーっ!」
奏は大きな声で美菜に声援を送っている。
まだ競技が始まったわけじゃないのだが。
美菜は元気一杯に体操をしていた。
少し遠いが、はっきりとそれが見てとれた。
お父さんは俺の横でカメラを構えている。
どうやら一番最新の物を買ってきたらしい。
昨日の夜は、時代はダブ録だ、とか言って騒いでいた。
「お」
退場するときにこちらに気付いたのか、美菜はこちらに手を振って退場口へと消えていった。
そんな無邪気な笑顔に、俺はデレデレとしてしまうのだった。